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とりあえずエミリアを砂漠から連れ戻し、森に戻る。
「意外と方向音痴なのよね。私。」
「全く意外じゃないぞ。むしろ似合っているぞ。」
「褒めても何も出ないわよ。」
「褒めてないんだが。」
誰かこいつのポジティブを止められるやつはいないのか。
「ほら、さっきの猿がいるぞ。」
予測はしていたがエミリアは既に猿の前にいた。
「先手必勝!!」
さっきそれでやられたのを覚えてないのかあいつは。とはいえ猿の胴体と頭が離れている。
「いよっしゃーー!!」
この数時間でちょっと訳わからないくらい強くなってるな、あいつ。普通死にそうになるとわかれば躊躇するはずなのに、それに対しておびえがない。
ただどうしよう。すごい心配なんだが。
下手に無謀なことで成功体験をさせてしまったから、今後もあいつは無茶苦茶するだろう。
そして死ぬだろう。
まあいいか。あいつの人生だ。その選択すらあいつの物だ。
「エミリア、やったな。」
「いったでしょ。私はエースなの。というか初めて名前でよんだ?コミュ障のあなたが?」
「お前は俺をコミュ障と思ってたんだな。よし、さっき砂漠でサソリを狩ってきたからコイツを食べろ。」
「あんた私を何でも食べる馬鹿だと思ってるでしょ。サソリには毒があるくらい知ってるわよ!というか今更だけどあんたの名前は?」
「馬鹿じゃなかったのか・・・・。」
「何ショック受けてるの!それより名前よ・」
「タカシだ。アンドウタカシ。」
「タカシね。あまり聞かない名前ね。」
「昔はいっぱいいたんだ。みんな世界が崩壊したついでに名前を変えただけだよ。本当はタカシのやつそこそこいるぞ。」
「まあいいわ。タカシ!あなたのおかげで強くなれたわ。ありがとう。これできっと1人でも世界を救えるわ。」
すぐ調子に乗るなこいつ。
「そうか。短い間だが楽しませてもらったよ。しぬなよ。」
「死ぬわけないでしょ。あんたが鍛えたんだから。じゃあね!私はこの奥に進むわ!」
気づいたときには、エミリアの姿はなかった。
あれなら、生き残れるかもな。
人類もかなり減ってしまった。知り合いもかなり減ってしまった。それでもこういう出会いがあるんだ。
いつかきっと生きてあえるといいな。
そう思いながら、行く当てもなく進んでいく。この崩壊した世界を。