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今の世界に生身の人類は少ない。様々な生存戦略の中でも生身で外界に出るということは苦しい部類に入る。
何故生身のままで暮らすのかというと、崩壊当時に金がなかったし、そんなに選択肢がなかった。そしてなんとなく暮らせてしまったからというのが大きいだろう。
崩壊後の世界に順応できたし、いろんなことに適応することが苦ではなかった。もちろん肉体的な苦しみは伴うが。
研究者志望だった俺は自分の体でいろいろ実験したらなんかいろんなことが出来るようになっていた。ただ、これについてこれる人類が全くいなかったので今も1人で外界で暮らしてる訳なのだが。
昔のことに思いをはせているとエミリアが起きた。
「死ぬかと思った!!」
「実際あのままだと死んでいた。」
「ありがとう。助けてくれて。とりあえずあの猿の頭が固いことがわかったから、もう一回戦いに行きましょう。」
馬鹿は死んでも直らないとはこのことか。
「どういう考え方をしてるんだ?また死ぬかもしれないんだぞ。」
「大丈夫。最悪脳みそさえ残ってたらやり直せるし。」
ネストの教育はどうなっているんだ?かなりやばい集団なんじゃないか。
「準備さえすれば、そんなことしなくても勝てるようになる。脳みそすら残らない可能性だってあるだろ。」
「あなたがいればそんなことにはならないでしょう?ところで準備って何?」
「とりあえずこれを飲んでからまずこれを飲め。」
「これを飲めばいいのね?」
エミリアは小瓶に入れている液体を一気にのんだ。
いや警戒心とかないのか?
「体がぽかぽかする。どこまでもいけそうよ!!」
「それはヒクイドリという回復力の高い鳥の血だ。しばらくの間体からどんどん力が湧き出てくるが、力を使い続けないと体が破裂する。」
「なんてものを飲ませるのよ!!」
とりあえず学習能力はなさそうだ。
「そのままじゃ死ぬからあの川で泳いでみろ。」
「あの川に行けばいいのね?」
エミリアが川へ飛び込む。と同時に沈んでいく。
「行ってなかったがその川の水は重力をおかしくする。死ぬ気で泳がないと死ぬ。」
「ざぎにいええぇーーーー!!」
基本的に説明する前にやっちゃうからどうしようもないじゃないか。
とりあえず重力に適応すること体を鍛えること回復力あげること、これらをいっぺんに出来るからお得なのだ。
「とりあえず自力でここまでこれる頃にはいい感じになってるだろうから頑張れ。」
というわけで俺はまだ適応していない謎の黒い物体を飲み込みながらエミリアの様子を見守った。