表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
思い付きで更新する、どこかにいそうな誰かの物語。  作者: どこかにいそうな誰かの代わり
7/15

【0007】ヨシロウ 0006

「あの、ヨシロウさん――」

 卓上用の醤油注しを手渡しながらトモミが話をうながそうとすると、ヨシロウは小さく首を横に振った。


「まあ、とりあえずトモミもビール飲もうよ。あれ? 買い物袋は?」

「お醤油取りに行くついでに、キッチンへ持って行きましたよ」

 イライラし始めたトモミの声に気付いたのか、ヨシロウは少しむっとした。

 しかしすぐまた笑顔に戻って「じゃあ悪いけど、俺だけ先に飲んでるね」とビールの缶を開ける。

「あの、ヨシロウさん……落としたお財布ですけど」


「話には順序ってもんがあるだろうっ?」


 ビールの缶を持ったまま、ヨシロウは突然声を荒げた。

「どうしてきみは人の話を大人しく聞けないんだ! どうして何度も何度も邪魔するんだ! 俺の話を聞きたくないのか!」

 そのまま缶をテーブルに叩き付けるように置く。まだ一口も飲まれていないビールが、盛大に跳ねてテーブルの上や床に飛び散った。

 トモミはその場に固まった。


「そんなに知りたかったら先に教えてやるよ。財布は見つかったよ! キャバクラの店の前に落ちてたらしいが、俺が店に電話した時にはもうなかったと言われた! これで満足か!」


 (ふん)()の表情、とはこういうことなのだろう。

 いつもは柔和で(ひと)(なつ)こそうなヨシロウの顔が、怒りで赤く染まっている。心持ち垂れ気味の目が今は吊り上がっていて、トモミには別人のように見えた。

 しかしこの時は恐怖よりも先に、何故彼がそんなに怒っているのかわからず、突然の出来事に驚いたため動けなくなっていただけだった。

 多分自分の言動の何かが彼の気に障ったのだろう、ということだけはかろうじて理解したが、どこが悪かったのだろう……


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ