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思い付きで更新する、どこかにいそうな誰かの物語。  作者: どこかにいそうな誰かの代わり
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【0002】ヨシロウ 0001

 * * *


 トモミが離婚したのはいわゆる『性格の不一致』というやつだ。


 元夫のヨシロウは、当時トモミが勤めていたデザイン会社に出入りする他社の営業で、七歳年上だった。

 取り引きのある数社の中で、ヨシロウの会社の仕事は社内でもそこそこ評判がいい。しかし時々無理な納期の仕事も来るため、「あそこは三番目だよね」という社員たちの評価は時々耳にしていた。


 何がきっかけだったかは忘れたが、社内の飲み会にヨシロウも参加していたことがあった。社員は女性の割り合いが多いため、社外の営業職の男性がご機嫌うかがいを兼ねて参加することがあるらしい。

 ヨシロウはいかにも営業職らしく、こまめに席を移動してはそこで話を盛り上げていた。


 トモミはまだ入社して一年にも満たない新人であり、端の方に座って話の合う先輩と大人しく飲んでいたが、やがてヨシロウはトモミの隣にも座った。

「わたしにまで気遣わないでください」とトモミが恐縮すると、ヨシロウは笑って受け流し、「まあ、トモミさんも一杯どうぞ」とビールのビンを軽く掲げた。

 その時に初めて彼の年齢を知り、その後は時々顔を合わせるたびに挨拶をするくらいには打ち解けた。



 彼は気さくな性格で他の社員たちとも仲がよく、物知りで気前がいい――他の社員からもそう聞いていたし、始めの頃はトモミもそう思っていた。

 何度か社内の飲み会に参加したヨシロウからこっそりデートに誘われ、何度目かのデートでトモミはヨシロウとキスをした。


 二人の付き合いは会社には言わずにいた。

 個人的な付き合いが、会社同士の取り引きに影響することをトモミは恐れていたのだ。しかもトモミは新人である。

 何か問題があった時、二人の年齢差や立場を考慮すると、会社を(くび)になるのは確実にトモミの方だろう。彼女はそうなることも怖かった。


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