表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
思い付きで更新する、どこかにいそうな誰かの物語。  作者: どこかにいそうな誰かの代わり
15/15

【0015】ヨシロウ 0014

 長葱をようやく切り終える頃には、小鍋の中身が半分くらいに減っていた。

 トモミは慌てて水を足す。

 IHヒーターを初めて使うので、火力の調整が思うようにならないのだ。

 冷蔵庫の中にあった出汁入り味噌はしばらく使われていなかったらしく、表面が乾燥していた。


 再度湯が沸いてから小鍋に豆腐を入れ、味噌を溶き入れる。味噌に熱が通ったことを確認して、一度火から下ろす。

 本当ならこの時点で生姜焼き用の玉ねぎも豚肉も下準備ができている予定だったのに……と、トモミは悲しくなった。

 恋人に初めて作る手料理だから、失敗なく、手早くできるメニューを考えたのに、こんなことでは不器用な女に思われてしまうのではないか、と考えたのだ。


 玉ねぎを半分に切り、片方はラップで包む。

 長葱も小さいものを買ったが、味噌汁にはそれほど使用しないため半分だけ使って残りは同じくラップして冷蔵庫にしまう。


 豚肉はやはり切りにくかった。のこぎりのようにギコギコと何度も挽いて、ようやく筋が切れるのだ。

 刃の中央付近が特に切れにくいのかと思って使う場所を変えてみるも、どこもあまり変わりない切れ味だった。

 思い通りに進まない事ばかりでトモミは苛立ったが、先に確認しなかった自分も悪いのだ。


 高級な刃物セットのセールスで「砥がなくても切れ味が落ちない」などという宣伝をしていることもあるが、これはそこまでの物ではないのだろう。


 切った肉をポリ袋に入れ、生姜や醤油で味付けをして少し揉み込む。肉に味を染み込ませている間に、包丁やまな板を洗った。

 よく見ると、まな板の一部にやたら傷がついている。ヨシロウはこの辺りを使う癖があるのだろう。

 またひとつ、彼の新しい癖を知った……そう考えると、ほんの少しだけだが温かい気持ちになる。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ