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思い付きで更新する、どこかにいそうな誰かの物語。  作者: どこかにいそうな誰かの代わり
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【0011】ヨシロウ 0010

「……あとはまぁ、生命保険とかローンとかの引き落としもあってね」

 駄目押しのようにヨシロウが呟いた。

 なるほど、トモミにはローンの負担がない。

 生命保険を払うような余裕も今のところはないため、そういった生活に直結しない必要経費に関しては気が回らなかったのだ。


「そんなわけで……」と言いながら、ヨシロウは刺身をつまむ。

「今週末は現金の持ち合わせがなくてさ。一応、小銭だけならいくらかそこの缶に入っているんだけど」

 箸を持った手でテレビボードの方を指す。トモミの両手に収まるような大きさの、缶の貯金箱が置いてあった。


「それくらいなら、今週末はわたしが出しますよ――だってわたし、いつもヨシロウさんに色々出してもらってるし」

「ありがとう」とヨシロウはほっとした声になる。

 しかしすぐまた表情が曇り、「でもさ……」と言い淀みながらテーブルのすぐ脇に置いてあるセカンドバッグに視線を向けた。


 私物のセカンドバッグには、財布やもろもろの私的な書類を入れている。

 三ヶ月前、立て替えてくれと言われた電気代の振込用紙も、そのバッグから取り出していたことをトモミは思い出す。

「あの……電気代とかっていつまでに払わなきゃいけないんですか?」

 払うつもりがあったわけではないが、話の流れ的にそれに触れないわけにはいかないような気がした。


「ガス代は来週でもいいんだけど、電気代は確か明日までなんだよなぁ……」

 独り言のように呟きながら、ヨシロウはセカンドバッグを開けた。

「明日……ですか」

 財布の中にいくら入れていたのか、トモミは必死に思い出そうとした。

「いやでもさすがにそこまでしてもらうのは悪いからさ、いいよ。自分でどうにかする」

 ヨシロウは取って付けたような明るさでそう言うと、バッグを置いた。


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