表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第二王子と幼なじみ  作者: みあ
本編
18/20

エピローグ

 万事に卒がない第二王子殿下が行動に出たのだから抜かりなく根回しが済んでおり、なにも心配することがなかったのだとマリアベルが悟ったのは求婚に応じてさほどたたないうちのことだった。

 彼女に常々身を慎むべしと言い聞かせながら育ててくれた叔母のマイラですら、お小言の一つもマリアベルに伝えることはなかった。

 むしろ「ようやくまとまったの?」等という始末だったから、いったいいつからエリックが根回しをしていたのか疑問に思うくらいだった。

 たぶん相当前からだと、誰に尋ねることをしなくても想像ができた。だからこそ現実を直視するのが怖くて逆に問うこともできない。


 自分のどこがよかったやらさっぱりわからないけれど、相当執着されている。

 ほだされることなく求婚を拒否していたら一体どうなっていただろうと考えても、早いか遅いかの違いだけで結局同じようになった未来しか見えなかった。

 人に愛されるということは、それだけでマリアベルを幸せにした。

 エリックは素直に愛をささやくなんてことはほとんどないけれど、マリアベルを尊重して気遣ってくれる。言葉はなくても確かな想いを実感できた。


 日頃は冷静沈着なのにマリアベルに関しては隠すことなく暴走するようになったのはいただけないが、一応は常識内に納めてくれているのだから目をつぶるべきだろう。

 マリアベルはため息を漏らしながら、自分に言い聞かせた。


 婚約を認められてから一年も待たずに挙式をあげ、ろくな妃教育も受けないまま王子妃になったとしても。それから時を開けずに妊娠が発覚しても。

 実のところあらゆることに覚悟も決まりきらないまま、そういうことになってしまったので諦めて自分を誤魔化すしかない。


 可能な限りエリックはマリアベルから不快なものを遠ざけてくれてはいるが、それでもよからぬ噂が完全に聞こえなくなるわけではない。

 幼馴染みであることをいいことに王子の同情心を煽って強引に婚姻にこぎ着けただのなんだの、陰口は聞こえてくるのだ。

 今はまだ平たく見た目にはわからず箝口令も敷かれ、限られたものにしか知られない妊娠が明らかになればどんな文言が陰口に加わるかわからない。


 きっとそれは聞くに耐えないだろう。

 ただ王子妃となった現在、直接マリアベルに文句をつけるような者はいない。遠くでひっそりと陰口を叩かれる程度のことに目くじらを立てるつもりはなかった。

 それに無遠慮な輩は最近過保護になってきた夫ができる限り遠ざけてくれるだろうから、問題はないと考えていた。

 問題があるとすれば、エリックがやりすぎるかもしれないことだけだ。


 近頃のエリックは、彼にしてはあからさまにマリアベルを寵愛してくれている。

 それは公務の合間を縫うようにしてマリアベルに会いに来るなど、誰が見ても分かりやすい形だ。

 さらには、彼が長年描きためたマリアベルの絵も一部公開していた。そうすることによってどちらがどちらを求めたのかつまびらかにしようと考えたようだった。


 第二王子殿下による一連の動きによって、城下にはもっともらしい王子と侍女の恋物語が流布されているらしいと耳にした時、マリアベルは唖然としたものだった。

 なんでも数年前から流行っている王女と公爵家嫡子の恋物語に迫る勢いで盛り上がっているそうだ。

 つい先日に、それは本の形にまとまったという。


「よくまとめられていると思うよ」

 同様にまとめられた異母姉の物語も張り切って読んでいたエルバートは、もちろん異母兄と従姉の物語も同じように読んだらしい。

 彼はわざわざ本を片手にマリアベルを訪れて感想を伝えてくれた。

 身分差ゆえにマリアベルが自分と距離を置いていたことに常々不満を持っていたらしい第三王子殿下は、従姉が義姉になると決まった時には大いに喜んでいた。

 協力したかいがあったと小躍りせんばかりの従弟にマリアベルは苦笑するしかなかった覚えがある。


「読んでみる?」

「ううん。恥ずかしいからいい」

「女の子の好きそうな感じの物語だったけど」

 いりませんと重ねて断ると、そっかと呟いてエルバートはテーブルの端に本を置いた。


「ちょっとどうかなーって表現もあるから、見ないなら見ない方が幸せかもね」

 どういうことか不思議で問いかけたマリアベルに、エルバートは「エセル兄上についてとんでもないことが書かれていた」と答える。

 王太子殿下が密かに姉を想っているからこそ、後継不在の恐れを避けるために第二王子殿下は長年想いを寄せていた幼馴染みであった侍女を娶ることにしたのだと書かれていたそうだ。

「物語として脚色されているんだろうけど、さすがにそれはないよねー」

 目を見張って言葉を失うマリアベルに、あっけらかんとエルバート。

「そう、ね」

 マリアベルは乾いた声で同意しつつ、ちらりと本に視線を向けた。


(リックさまの仕業だわ)

 マリアベルは本の出版にエリックが関わっていると悟った。そもそも二人の物語がまことしやかに城下に広まったことにも関わっているかもしれない。

 将来の国王に対する不敬ともとれる話が、簡単に沸いて出るものとは思えなかった。

 この分では、王太子殿下が男色だという話も広まっているかもしれない。

 望み通りマリアベルを妃とする裏で、着実に兄王子のためにも動いているようだ。


 いつでも望む時に従姉に面会できることにご満悦のエルバートが恒例のお話をはじめるのを聞き流しながら、マリアベルはこれから先も自分はエリックの行動にやきもきするのだろうなとこっそり嘆息した。

そう遠くないうちに番外編をいくつか投稿したいと思っています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ