ティーンコ、召喚さる
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初めに、この作品はパッと思いついて日頃のフラストレーションを叩き付けただけの作品なので現状あまり続ける気がありません。良ければぜひ感想をいただければと思います。
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「あ、申し訳ございません。えぇ、えぇ、はい、かしこまりました。申し訳ございません、あ、はい。それでは失礼いたします。申し訳ございません」
ガチャあ
「あ~~~~」
もう嫌だ、仕事やめてー。
なんで毎日毎日ちびデブハゲにペコペコしなきゃなんねーんだよ。下っ腹がはみ出てんだよおまえー。
今日はまぁまぁだ、定時3時間オーバー。フラフラになりながら電車に乗る。本当は楽になりたいが、目の前で口をあんぐり開けて隣の人にもたれかかっているバーコードを見て、心の底の一握りのプライドが俺を奮い立たせる。
「ドッヒャー!」
27歳にもなって大声を出しながら自分のベッドにダイブする。この瞬間がたまらんのだよ。
うぉっとー、ここで寝るわけにはいかんのだよ、楽しみにしていたゲームをやらないと。
このゲームに初めて出会ったのは中学生の頃、自分が剣と盾を持ち世界を救うために敵と戦う。当時としては綺麗なグラフィックに心躍らせたものた。今は更に進化しているらしい。楽しみだー
ビールを片手にゲームを起動する。
ブーーーン…バチッ!
「あ、あれ?」
ゲーム機が音を立てる。今までそんな事なかったのに、まだ壊れるほど使ってないぞ?
シューー!
「え、え、ええ!?」
今度は俺の真上になんだこれ?光の輪っかができている。あら、あらあら!体が宙に浮いてる!
「あ、あー!!」
そのままどこかに飛ばされてしまった。
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「はっ!」気が付くと目の前に青空が見える。
「うぉおお!!」周りで何か喜びの声が聞こえる
「え!?」
体を起こし、周りを見ると変な格好をした数人に囲まれていた。
ていうかここどこよ!
「お目覚めになられたようですね」
混乱している俺をなだめるようにしっとりと艶やかな女性の声がかけられる。
「は、はい」
その女性は声の通り、とても綺麗で艶やかで豊満でプリプリでムチムチだった。
「ここは…」
「驚かれるのも無理ありません。ここはシモタネ、ようこそ我が世界へ」
「シモタネ…。ここは、異世界?」
「あなたは別の世界からここへ召喚されました。この、シモタネの勇者、ティーンコとして」
「召喚…勇者…」
ガォーー!
遠くで生物の鳴き声が聞こえる。あれは…、ドラゴン?
見たことない建物に、見たことの無い形の山、建物。
ぐぃ!
「いて!」
ほっぺをつねってもちゃんと痛い、これは夢なんかじゃない。俺は本当に、異世界に来たんだ!
「異世界、キター!」両手を天に掲げる。夢が現実になった、しかも勇者だ!俺は主人公になれたんだ!
「話さなばならない事がたくさんあります。中へどうぞ」
「は、はい!」
どうやら今いる場所は城の屋上だったようで女性の後について中に入る。城内もとにかく豪華でRPG感に溢れていた。
「こちらにお座りください」
「はい」
女性に案内され広い客室のフカフカの椅子に座る。
「申し遅れました。私はこの国ランゼーの姫、マリアンコと申します」
「初めまして、俺はヤマト タケシです」
「や、や、ヤマト…ですか///」姫の顔が赤くなる。
「え? どうかしました?」
「い、いえ、失礼しました。タケシ様、あなたは3代目の勇者ティーンコとしてこの世界に召喚されました。こちらは理解できましたでしょうか?」
「ティーンコね…」
「そうです、ティーンコです!」
「わかりました、あ、あまり大きな声で言わないでください」
「どうしてです? 代々この世界に平和をもたらしてきた勇者の名前ですよ」
「そうですけどー…。あ、そうだ、姫が俺をここへ?」
「さようでございます。私があなたを召喚しました。勇者召喚は姫の仕事ですので…そして…。」
「そして?」
「私は勇者と婚姻することが決められていますので、その、3日後には婚姻の儀があ行われます」
「え? じゃあ3日後に俺はあなたと結婚するんですか?」
「そ、そうです」
「あらぁ…」
「末永く宜しくお願い致します。」
「はぁ…あらぁ…」
あらぁしか言えない。
その後は「来たばっかりで疲れたから休ませてほしい」と言って休ませてもらった。
俺のために用意された部屋はまぁ豪華で逆に寝づらかった。
しかし幸か不幸か、こんな美人と結婚できるなんて!彼女いない歴はとっくに10年を超え、腰の振り方もすっかり忘れてしまった。
それにしても、この世界に来てからいちいち引っかかる名前が多いのは気のせいだろうか。せっかく勇者なのにティーンコはないよー。ギリギリだものー。
翌日
「タケシ様、いえティーンコ様。これからこのシモタネが現在どうなっているのか説明させていただきます」
「ティ、ティ、、ンコ…あ、はい」
「どうかなさいました?」
「名前なんですけど、やっぱり…勇者ヤマトとかいかがです?」
「や、ヤマトはちょっと///」
昨日から気になっていたんだが、ヤマトって言った時の姫の反応がおかしくないか?
「勇者ティーンコ」姫にお付きの兵士が俺に近づき、耳打ちしてきた
「”ヤマト”はいかがわしい言葉ですので、お控えください。」
「え、そうなんですか?」
コクっ
姫が話の内容を察して頷く
「わかりました。すいません」
「い、いえ、こちらとは異なる文化圏で生きていたのですから仕方がないでしょう。」姫は物分かりが良いみたいだ。
「さて、今シモタネは永い間封印されていた魔王コカンが復活し…」
「コカン!?」
「えぇ、コカンです」
「そ、そうですか…w。コホン!…。続けてください」
もちろんこの世界では違うってわかってるよ、でも日本人の俺にはおもしろい名前に思えて仕方がない。こみあげてくる笑いを抑えるのに必死だ。
「魔王コカンの復活により、シモタネは危機にさらされています。既に大陸の北部が制圧されており、じわじわとその勢力を伸ばしています」
「なるほど、俺が魔王コカンを倒せば良いんですね」
「そうです。そのために、タケシ様には旅に出ていただきます」
「直接コカンを倒しに行ってはダメなんです?」
「今のあなたではまだその力を発揮できないでしょう。各地を旅し、先代の勇者ティーンコも受けてきた試練を乗り越え、真の勇者として目覚める必要があるのです」
「なるほど」
「そしてこれが、伝説の剣”ウマナミ”です」姫が俺の前に剣を差し出す
「ほう、ティーンコのウマナミが馬並みで…っておーい!」
・・・
できすぎた名前に思わずノリツッコミをしてしまった。空気が静まり返る。
「どう…されました?」
そんな心配そうな目でこっちを見ないでくれ!
「いや、剣の名前、もう少しなんとかならないのかなーって。エクスカリバーとか」
「え、え、エクス…カリバーだなんて///」
「勇者ティーンコ!」兵士がすっ飛んでくる
「その言葉は2度と口にしないほうが良いかと!」
「これも!?」
コクッコクッ
姫がそんなに激しく頷くとは、よほど恥ずかしい言葉なんだろうか。
「とにかく!各地を旅しながら勇者の試練を受けて、魔王コカンを倒せばいいんですね」
「その通りです!明日、共に旅をする仲間と会う予定です。」
「わかりました!」
(つづく)