子供等に
僕が眼を覚ますと、もう黄昏時も廻ってゐる時分であつた。
独り身の僕にはわからぬ光景だが、子供等の遊びからかへる声のするのは、実に心地好い。
かつて僕にもそんな記憶があつた筈であるが、なにぶん、孤独を永くしては記憶も欠いてしまつた様だ。
子供等はいつか、僕のやうに孤独になると云うのだろうか、或は、あの父母たちは涙に暮れることがあるのだろうか。
子供等に
昼寝から眼を覚ますと
子供等の声がこだました
あゝ昏鐘鳴の時分かと
窓の外をのぞいてみれば
沈みかけた陽が朱く
街は黄昏に闇がりゆくが
駆ける子供等と 呼ぶ父母の声の
なんとあかるいことか
街に無機質な灯りがともり
空が星影で煌く頃
屹度あの子供等は安らかに
守られて眠るのだらう
其れがどんなに美しく
どんなに仕合せであるか
流るるように変わる世に
ひとつ 変易せぬものがあるならば
其の安寧に違いない
あゝ 希くは
奕葉に子供等の平安が続かむことを