新たなる発現3
蓮にとっては永遠とも思えた時間だが、実際は10分位だったろう。狼男事件の時のトラックが6台、隠ぺい工作担当の処理部隊を満載して到着した。処理部隊の隊長は蓮から場所を聞くと、テキパキ指示を出して処理していった。ごくありふれた国産の軽、多分日産のモコがトラックの間に停まっている。中からサングラスを掛けた初老の品の良い婦人が、オーナー秘書の美島恋華に手を引かれて降りてきた。目が不自由なのだろう。モコは恋華の愛車の様だ。老婦人が蓮に声をかけてきた。
「炎聖。初めまして。〈月読み〉異能の力を見通す者よ。この娘達ね。遠隔感知じゃ一緒にいるどちらかは判らなかったけど、おさげの娘が発現者だわ」
「真美ちゃんですか。どうするんです。やっぱりナイツに?」
恋華が口を挟む
「例外は有るけど、オーナーは強力過ぎる危険だって。あなたの時と同じ反応よ。それに血まみれをどうにかするにしても、炎聖あなたには無理でしょう?」
それは事実だったので蓮は素直に
「はい。お願いします」
頭を下げた。月読みが言い添える。
「エージェントにするかはルシファー次第。それでも訓練は必要よ。安全装置なければ暴発した時、大量殺人するの。何度も平さんに諭されてるでしょう?それで、どっちが彼女?」
蓮は躊躇わず
「異能者じゃ無い方です。真美ちゃんは自分が発現した時に焼き殺した男の妹なんです。それが異能者として人を殺めるなんて・・」
「それなら炎聖、あなたが全てを話すべきね」
月読みは労る様に語りかけた。その時、処理部隊隊長が報告する。
「処理並び、バイクの回収完了しました」
「本部に向かう」
蓮は決意を込めて宣言した。
あずみも真美も本部に着いても目を覚まさなかった。女性スタッフが血まみれの体を浄め、制服も下着も新品と取り替えて惨劇の痕跡は無くなる。二人は医療室内に並んで寝かされていた。先に意識を取り戻したのは、あずみだった。
「ここは?」
付き添っていた蓮が答る。
「僕のバイト先だよ」
「変な夢。バイクに取り囲まれたら乗ってた人が爆発したの」
「夢じゃ無いんだ。現実。真美ちゃんがやったんだよ。異能の力が発現したんだ。異能の力は超能力みたいなもの。厳密には違うけど。生命の危険と、著しい感情の発露を引き金に発現する」
言葉を切る様に蓮は言った。
「私がやったんだ。人を殺したのね。三人も」
あずみの直ぐ後に意識を取り戻していたのだろう、真美が絞り出す様に言った。
「真美ちゃん。僕も異能者なんだ。僕の時は・・」
「兄貴。そうでしょう?」
「何でそう思うの?」
「先輩が言い難そうにするのは・・。兄貴、先輩に暴力振るっていたし」
「ごめん。謝って済む事じゃ無いけど」
「緋村くん何言ってるの?何がどうなって・・」
あずみは混乱していたが真美は冷静だった。
「兄貴は自業自得だよね。先輩、生命の危険って言ってましたよね。それほどの暴力先輩に。私は只バイクで囲まれただけで」
「危険を感じたらだから。あの三人に悪意が有ったのは確実。真美ちゃんが悪いんじゃない」
蓮は言葉の無力を感ながらも慰めた。




