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風花の世紀  作者: 愛媛のふーさん
19/25

対決4

 〈カイザーモード〉これは、千堂が帯電した電力が臨界を突破すると生じる状態である。電気で活性化する千堂の身体は最高の状態になり、反応速度は20倍、パワーは20倍、身体の強度はなんと100倍になる。カイザーモードで放たれるパンチは通常の200倍の威力を誇る。比較的軽量の千堂だがハードパンチャーで、安全装置のメリケンサックを握り込んだパンチは500㎏の破壊力だ。その200倍、つまり100トンである。その100トンパンチがケルベロスを襲う。

「行くでぇ!喰らえ」

千堂は眼にも留まらぬダッシュで、ケルベロスの体の下に潜り込むと体ごと突き上げるアッパーを放つ。有無を言わさず腹に食い込むと、そのまま吹き飛ばした。ケルベロスの巨体がゴロゴロと転がる。

「凄い」

蓮が驚嘆の声をあげる。

「こんな物やないで」

そう宣言すると千堂は起き上がったケルベロスに雨あられとパンチを浴びせかけた。踏ん張るケルベロスがズルズルと後に押される。形振り構わず属性攻撃を千堂に放つが、雷撃も含まれているので意味がない。こうなると千堂の独壇場で、蓮も遼も得物を仕舞い見物モードだ。

「そろそろ仕舞いにするか。トールハンマー!」

〈トールハンマー〉千堂の安全装置封印解除〈始解〉である。1万メガワットの電撃だ。原発一基が100Kワットアワーなのでどれ程の電力かわかるだろう。ただしアワーではなく千堂のはセコンド〈秒〉だが。

 凄まじい電撃で辺りが眩しくなる。その光が収まると夕闇に包まれた。ケルベロスは跡形もない。トールハンマーで焦げた地面と強いイオン臭だけである。カイザーモードが解けた千堂は普段通りの佇まいだ。

「凄い奥の手だね」

「美味しい所独り占めですね」

蓮と遼は各々の感想を述べる。

「電気貯まる迄かかるんが難点やけど、カイザーモードのわいは無敵やで」

千堂は自慢気に胸を反らせた。

「そうだね。雷雨とかでも可能なんだよね?任せるよ」

「そうそう無敵なんだから蓮君、千堂君に丸投げしちゃいなさい」

「何の為のバディやねん。電気貯まる迄は蓮が凌がんと」

「チャージの間は頑張るよ」

決着がついた安堵から軽口が口を突く。

「結局ネクロマンサーの素性も何もかも解らんかったな」

千堂が唯一の禍根を述べる。

「ケルベロスの召喚にすべて捧げましたからね」

「葬式すら不要な死に方やな」

後味悪そうに遼と千堂が話すのを聞きながら、蓮は彼に親兄弟は恋人は居たのだろうかと考えた。闘いの場でしか顔を会わせて無いので、そういった人との縁を想像出来なかった。孤独が似つかわしい男である。生者ではなく死者との対話のみを行っている、それが違和感なく納得出来てしまう。死に方だけでなく生き方も不幸せだった様で、更に後味悪くというより悲しく蓮をさせた。


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