対決2
蓮は千堂の言葉に頷きながら監視を続けた。愛刀十六夜はギターケースから竹刀袋に移し替える。いつでも飛び出せる為だ。千堂も防刃防弾スーツを着こんでいる。蓮もスーツを私服の下に着た。
「動きは有りましたか?」
遼も食べ終えたらしく、訊いてくる。蓮は
「未だ何も」
短く答えた。しかし、蓮と千堂と遼の三人は感覚でじきだと覚っている。そこへ光の家本部にマイクロバスが乗り付けた。
「来ました」
蓮の言葉を合図に後を監視要員に任せ、三人と一匹はマンションを駆け出た。ナンバーは記憶済み、要員から発車した方向は連絡が入る。見失うおそれはない。遼の愛車パンダに全員が乗り込むと直ぐ発車させた
「ネクロマンサーも居るんやな?!」
「片付けてやりましょう」
千堂と遼は意気が上がっている。対称的に蓮は心を静かに落ち着けていた。相手が死霊使いである以上、蓮の聖の特技〈レクイエム〉が勝負を決める。リッチゴースト用の秘策は用意した。後はタイミングだけだ。高ぶる必要はない。
「今度は奥多摩に向かっとる様やな」
「採石場なら特撮ヒーローだね」
「呑気ですねぇ」
三人共今度で片が付くのを疑っていなかった。
夕日が山影に溶けようとする頃マイクロバスは、採石場で停まった。パンダも50メートル程離れて停まる。更に後方に黒のセダン。これは公安だろう。離れた距離そのままに対峙する。蓮と千堂は太く長い筒を持っていた。ネクロマンサーは召喚を始め、テロリスト達はライフルや散弾銃、拳銃を構えた。その時蓮達の筒がバンと音を発てて何かを発射した。頭上10メートルで広がると、それは直径20メートル程のワイヤーで出来た網だった。ネクロマンサーとゴースト、テロリストを絡めとる瞬間に電撃とレクイエムが放たれる。呆気なくけりがついた。リッチゴーストは霧散し、テロリストは気絶したのである。
「やったな」
「作戦成功」
喜んだ時、ネクロマンサーの低く不気味な声が、何かを呟くのが聞こえた。
「デモンの意思と古の契約に因りて、わがいのち用いてその呪われた姿現世に現さん、地獄の番犬ケルベロス!!」
地面に大きく魔法陣が描かれ、ネクロマンサーは呑み込まれる。自らの命と引き換えに地獄の魔物を召喚したのだ。魔法陣が輝き空間が歪む。三つ首の巨大な犬の魔物、ケルベロスが姿を現した。ワイヤーで出来た網は紙の如く易々と喰い千切られる。ケルベロスの行動を制躊する物は何もない。気絶しているテロリストを巻き込まぬように三人と一匹は場所を移動する。
「デカイなぁ。どんだけ有るんや?」
「ざっと10メートル体重2トン。象並だね」
そこへケルベロスの攻撃が飛んできた。1の頭は炎、2の頭は吹雪、3の頭は雷撃各各異なる属性の攻撃だ。
「さてどうしますか」
蓮は誰に言うでもなく独りごちた。