異変2
そのまま蓮はあずみと真美を送って行く事にした。本部ビルを出る前に千堂にスマホで連絡する。千堂は明るい声で、すっぽかしを咎めるでもなく
「大変やったな。ガールフレンド、今度紹介してぇな。こっちは例のネクロマンサー帰って来てるで、肩の傷まだふさがって為さそうや。今日中に動きないやろ」
と、一方的にまくし立てる。蓮は苦笑しながら答えた。
「そう。紹介は今度の件片が着いたらね。明日は必ず行くから。気を引き締めて監視しといて下さい。遼さんは何て予想しているの?」
「動くとしたら明日やろうって。出入り数えたら人員が揃ってる様には思えへん。異能者の発現が今日で良かったわ」
「不幸中の幸だね。まぁ僕が臨場出来なくても、千堂と遼さんと疾風の臨時バディでもテロリストは制圧できると思うけど」
「そやな。明日待ってるで。女の子達の初出社送るんやろ?」
「うん。乗り継ぎ分からないといけないから。そんじゃ、宜しく」
蓮はスマホを切った。そしてあずみと真美に向き直り
「帰ろうっか?」
言って時計を見る。7時、帰りつくと8時だ。少し遅い。大丈夫だろうか?
「遅くなってしまったけど、お家の方に連絡しとかなくていいの?」
蓮は二人に訊いた。
「そういやそうね。真美ちゃん、お家に電話。スマホは前から持ってたほうね」
「はい。部活帰りにファーストフードに寄った事にしますね」
二人は蓮から離れて電話した。すんなり信じて貰えたらしく、二人共OKサインを蓮に向かって出した。
次の日、昼休みあずみは新体操部の顧問の女教師に、退部届けを提出しに行って引き留められた。何故に辞めなければ為らないのか、しつこく問い詰められた。真美も提出しに来てるから、尚更だったのだろう。二人は半ば強引に退部届け提出して、職員室を出た。蓮は外で待っていた。
「受け取って貰えた?部活問題がないなら放課後、校門で」
「うん」
「はい」
部員を二人失ってしまった新体操部の今後を思って、蓮は少しだけ胸が痛んだ。それも一瞬の事で、光の家の出方の方に想いは飛んだ。今日にも動きがある。早く監視所のマンションに向かいたかった。しかし、女子高生二人を本部に送って行く必要もある。蓮はジリジリしながら、午後の授業を受けた。授業が終わり、校門で二人と落ち合う。真美の緊張をほぐすべく、当たり障りのない会話を途切れさせない様に、気を遣いかつ乗り継ぎを教えた。ナイツの本部に着くと平馬を受け付けで呼んで貰った。平馬は調査部の部長と一緒にエレベーターで降りてくる。平馬はパッキングされた、トレーニングウエアと濃紺の女物のスーツを持っていた。平馬は言った。
「真美さんはトレーニングウエア、三島さんはスーツに着替えて。三島さんは調査部の情報処理をしてもらう」
部長はあずみに如才ない笑顔で
「調査部の責任者の大河原だ。三島あずみさん宜しくお願いします」
そう挨拶した。