異変
あずみと真美とのお通夜の様な食事は続いていた。今になって事の重大さに心が押し潰されそうになっているのだろう。口数は多く無い。蓮にはその気持ちは良く解る。蓮は二人を気遣い何気なくを装い訊いた。
「村山君はどんなお兄さんだったの?」
自分が殺した男が家族としてはどんな人間だったか知りたかったのだ。それに真美が泣けたほうが良いという考えも有った。
「小さな頃は仲は良かったですね。一緒に布団並べて寝てた。そういや『お兄ちゃんのお嫁さんになる』なんて言ってたっけ。でも、お互い中学上がった位からあんまし喋らなくなりましたね。兄貴の高校受験の時は兄貴、カリカリして些細な事でキレれて手が付けられなくて親父と大喧嘩して殴られました。気が小さな男なのに格好つける所有って、無理せず自然体にしたらって思ってました。もう全部過去形なんですね」
そう言って下を向いた。涙を堪えている。あずみが優しく言う。
「思いきり泣きなさい。泣いたら良いの。区切りつくから」
真美は声を殺して泣き出した。蓮はあずみが居てくれて良かったと思う。蓮一人だったら真美は泣けなかっただろう。蓮もあずみも箸を進めつつ、真美が泣くに任せた。10分程泣くと真美は涙を拭い
「食べますか」
一気に食べ出した。無理に口に運んでいるから真美が喉を詰まらせないか心配だったが、案の定苦しそうにお茶を飲んだ。あずみは真美の背中を摩りながら
「真美ちゃん大丈夫?無理に詰め込むから」
注意する。真美は恥ずかしそうに答え、頭を掻いた。
「すいません」
食事が終わり三人はスタバでお茶をすることにした。蓮はいつものキャラメルマキアートのホットのトールをたのむ。二人も同じ物を注文した。蓮は
「二人共、部活本当にいいの?エージェントだって無理に為る必要性なかったんだし。今から断っても良いんだよ」
真美は首を横に振り言う。
「いいえ、なります。決めたんです。それに自分が普通の女の子じゃないなんて、まるで漫画のヒロインみたいで、なんか良いじゃないですか」
「遊びじゃないんだよ。命懸けに為る」
「判ってます。殺した人たちの為にも、それだから為る必要有ると思うんです」
「そう。真美ちゃんは解った。三島さんは?」
あずみは一口飲んで答える。
「目の前であんな事遇って、色々信じられない事知って、もう普通の高校生活なんかおくれないわ。真美ちゃんと緋村君の事心配だし」
「でもナイツに関わる必要性有る?平さんじゃないけど、君がそこまでしなくても。部活だって後、一年なかったんだし。最後迄続けたくなかったの?」
「真美ちゃんが決めたのと同じよ。私、亡くなった三人忘れられない。多分これから何度でも夢にみる。緋村君もそうだったんじゃない?」
「ああ。確かに夢にみる。でも、ナイツに関わっても救われる訳じゃない、逆だよ。いつまでも突き付けられる。そういう事なんだよ」
「それでも良い。仲間外れは御免よ。一緒なら耐えられる」
「解ったよ。苦労することになるから覚悟してね」
そこまで話した時、平馬が真美の安全装置持って来た。黒のメタリックな水鉄砲だった。
「如何なる時も身近に置いておいてくれ」
平馬は言って真美の肩を叩いた。