新たなる発現5
蓮達はルシファーに一礼すると、オーナー室を出た。そこには精悍に日に焼けた〈グラビティキング〉ことルシファー直属の教官役、山口平馬が立っていた。
「俺は山口平馬。村山真美さん、君の指導係だ。平さんて呼んでくれ。蓮。お前も真美さんのサポートしてもらう」
真美は緊張気味に挨拶する。
「宜しくお願いします!」
「サポートって何すれば良いんですか?」
平馬が二人に答える。
「宜しくな。蓮、お前は取敢えず当分は何もしなくても良い。任務に専念しろ。片が着いたら訓練に付き合ってやれ。後、相談にのってあげたりな」
「判りました」
平馬は真美に笑顔を向け
「安全装置を作る。その為の検査を受けて欲しいんだが。あっという間に終わる」
「はい」
真美は頷いた。四人は20階の研究室に行く。真美は蓮の時同様に3メートル四方の小部屋で、水平に照射されるレーザーで頭頂から足先迄スキャンされる。検査はこれだけだった。平馬が真美に訊く。
「格闘技の経験は?」
「有りません」
「エージェントに為るなら安全装置は武器に仕込むんだが、それなら水鉄砲が良いかな。何せ〈属性〉が〈水〉だから。水鉄砲なら玩具に見えるし。ただし、異能者の能力があれば本物の銃なんか較べ物に為らないほど強力な武器になる」
「お任せします」
此処まで口を挟まなかったあずみが、真美に問いかけた。
「気持ちは解るけど、何も真美ちゃんが危険な事しなくても・・。良いの?部活は辞めるの?」
「部活は辞める。何かしなくちゃどう今日の事と向き合えそうに無いんです」
「判った。私も付き合う。山口さん普通の平凡な女子高生にも出来る事有りませんか?」
「有るには有るけど。それこそ君がそこまでしなくても」
平馬は戸惑っていた。しかし、蓮には解る気がして言い添えた。
「平さん、僕からもお願いします」
「判ったよ。表の顔のナイツのバイトなら幾らでも有るから、それで良い?裏の顔も知ってるならセキュリティレベル高い部所にも関われる」
「はい!」
「ま、人事課長に言っとくよ。村山さん安全装置は2時間で出来る。訓練は明日から大丈夫?」
「判りました」
「蓮、二人に電車の定期とスマホ発給して貰って食堂でメシでも食ってろ。安全装置出来たら届ける。今日の任務はいい。二人送ってけ」
「了解です」
三人は1階の受け付けであずみと真美のスマホと定期を支給して貰い。2階の社食でトンカツのしぐれ煮の定食を選らんで、窓際の席に着いた。
「食欲無いと思うけど食べなきゃ」
蓮が励ます様に言うと二人は箸をつけた。
「美味しい。こんな状況でも美味しいって思うんですね」
真美がポッりと言った。