恋するマッチョ
という訳で、只今絶賛野営準備中です!
この世界にやって来て、野営も手馴れたものですよ!
ゴーレム達に助けられてデスケドネ……。
「竃を用意するね、火起こしをお願いしてもいい?」
先程お友達になったフィアに頼んでみる。
「はい、わたし、火魔法です」
火魔法は得意らしい。
石を並べて竃を作り、薪を用意するとフィアがあっという間に火を点けてくれる。
お見事!
何時もは吟風に頼むのだけど、吟風のファイヤブレスだと野営の度に森が消えちゃうからね、やっぱり時代はエコロジー、森林資源は大事にしないとね。
でも吟風は良いところを見せそびれちゃったかな?
「今日は新鮮なお肉が手に入ったから、焼肉なんて如何かしら?」
「や……焼肉?」
フィアの目がオドオドと中空を彷徨う。
「焼肉嫌いだった?」
フィアはブリブリと首を振り否定する。
「昨日、一昨日、ずっと、ドングリだったから……」
え? エルフって菜食主義なの? て言うかドングリ?
「えと……お肉ダメだった?」
「違う、わたし、ビンボー」
あー……。
「でも、調味料、ある」
フィアが肩掛けカバンから、見た事も無いような調味料を、次から次へと出して行く。
「すごい! フィア凄いよ! こんなに沢山の調味料、見た事ないよ!」
フィアは顔を赤らめながらモジモジしている。
「これで、ドングリ、美味しくなる」
ドングリを美味しく食べる為の努力なのかぁ、あれ?
「フィア? 調味料って高価よね?」
フィアはキョトンとしている。
「調味料を買うお金で、お肉が一杯買えるんじゃ?」
フィアはその発想は無かった! と言う顔をしてドングリを握りしめる。
「これは……呪い?」
「う……うん……まあドングリは置いといて、焼く板を用意するね」
あ……そう言えば……私の焼き肉の鉄板て、ちょっと変わってるんだった。
「あのね……フィア、私ってゴーレムしか魔法が使えないの」
「はい」
「焼き肉の鉄板もゴーレムなんだけど、あまり驚かないでね?」
「大丈夫、です」
私はゴーレム作成の魔法を行使する。
足元から身長五十センチ程の、マッチョな男の人が現れて、おもむろに身体に油を塗りだした。
テカテカに光る身体を見せつける様に、ポージングをした後に竈の火の上で四つん這いになった。
苦悶の表情を浮かべながら、マッチョ鉄板は固定されたので、背中の上にお肉を置くと、ジュージューと音を立てて香ばしい香りが辺りに漂う。
「何故、マッチョ?」
ああああああ、やっぱり変な子だと思われたあああああ!
『オガアアアアアアアン!』『ゴワアアアアアアアアアア!』
吟風と彗星が近くの山にファイヤブレスを放ち、山肌がみるみるうちに黒くなって行く。
「お肉、美味しそう……デス」
「え? この鉄板でも平気なの? フィア」
「マッチョには、耐性、ある」
よかった……変な子だと思われてなかった。
「動物だと可愛そうだし、女の人だとやっぱり熱いみたいで、クネクネと動いてお肉が落ちちゃうの……」
「これで、平気、デス」
「フィア……ありがとうね」
ちょっと涙が溢れちゃった。
フィアは私の涙を見ないように、焼けるお肉に視線を移してくれている。
優しい女の子と知りあえてよかった……。
天然ボケと天然ボケを絡ませると、酷い事になります。
勉強になりました。




