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ひまわり畑  作者: otsk
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これからやるべきこと

「まあ、それ以来あいつと付き合い始めましたが、あいつも俺以上の問題児でしてね。妹への告白を妨害しようと乗り込んで黒板破壊したり、それで引かない奴は徹底的に戦闘不能にさせてましたからね」

「どこまでも向日葵大好きだからなあいつ。まあ、結局のとこ、お前はまだ何にも勝ってない自分が何をすべきか見つけれてないってところか?」

「まあ、そんなところです。でも、暴力で勝とうだなんて考えちゃいないです。二年経った今でも、あいつはメチャクチャですから」

 何も知らない、高校生のやつが行って、色んな意味で玉砕したという噂を耳にする。その役割は俺のはずなんだけどなぁ……。

「………」

 店長は黙りこくっている。自分が何をアドバイスするべきか迷っているだろうか。

 そして、目が見開かれた。目つきが鋭くて怖いことに定評がある俺でも怖い。

「向日葵の部活がない日分かるか?」

「次の日曜日はないって」

「休みやるから、デートにでも連れてってやれ」

「でも……」

「埋め合わせをしろとは言わねえ。要するに、お前がどれだけ本気かっていうのを向日葵に見せてやればいい」

「日向にはそれでいいかもしれないですけど……」

 もう一人の懸念する人物がいる。

「お前の兄貴って奴か。今は何してるんだ?」

「サッカー部を二年連続で全国に導いて、生徒会長やるために辞めてます」

「和解は?」

「出来るもんなら……そもそも起こるべくして起こったことなんすよ。和解以前の問題なんです。俺は家で孤立してるも同然だし、それに、俺、サッカー辞めたんです。日向には高校のサッカーの空気が合わないって言ったけど、本当はサッカー用具が俺に合わないんですよ。中学で引退してから、さらに背が伸びて、前のやつが使えなくなったんです。小学校の頃から背が高かったんですけど、一、二年の時は伸びなかったんでそのまま使ってたけど、もう使えない。もう、親には学費以外、何も出してもらってません。だから、俺、こうしてバイト始めて、兄貴の絶対にやらないことを始めようって考えたんです」

「まだ、やる気はあるのか?」

「入ったところで兄貴と比べられるだけでしょう。あいつはどうだった。お前はどうなんだ。そんなのはもううんざりなんです。俺個人を見てくれる人もいることには居るだろうけど、結果的にはあいつの弟だから。それが尾ひれにつくのが目に見えてんですよ。それが、俺には一番の苦痛なんです」

 まぎれもない、俺の本心だ。言葉だけ聞いてれば、ただ目の前の敵わない敵から逃げたチキン野郎だ。でも、それを延々と避けさせられることもなく目の前に置かれ続けた俺の気持ちは分かるだろうか。兄より優れた弟はいない。それを証明されてるいい例だ。俺の兄は俺の才能を横から全部かっさらっていく。別にあいつに悪意があるわけじゃない。サッカーだって、やる以上は真面目にやって、それで出した結果だ。本当にあたるべき相手ではないと思う。でも、他に当たるべき相手が見つからないのだ。

 才能を持たなかった、俺自身に当たるべきか。俺に愛情を注がず、スレさせた親を憎むべきか。

 それも、何か違うと思う。才能を持たずとも、親から愛情を注がれる手立てはいくらでもあったのだから。今からじゃ、そんな気は起きはしないけど。

「よし、明日は臨時休業だ。明日、ちょっと付き合え。お前がやるべきことを見出させてやろう」

「はい?明日、月曜ですよ?」

「ぬお!しまった!普通に学校あるじゃねえか!サボれ!」

 旭も大概、メチャクチャなこと言うやつだけど、店長もそれ相応だ。そういや、あいつ、この人に育てられたとか言ってたっけ。なんか納得。

「あの、学校帰りでいいすか?その日はどうせバイトの予定だったし。それまで普通に仕事してください」

「おお、そうだ!明日はけいたろうとゆきの誕生日ケーキの予約が入ってたぜ!ちゃんと渡さねえとな!」

 一年に一度の誕生日なんでちゃんとしてやって欲しいものだ。この人、ケーキ屋としてよくやってこれてるな。

「それで、やるべきことって?」

「まあ、一つデートは確定事項にしとけ。監視がつくかもしれんが。もう一つは、明日これば分かる」

 デートするというのに、いやな確定事項も混じっているんですけど。向日葵ちゃんをあいつの庇護から離すって言ってなかったか?あいつは。だが、あいつはやりかねん。ついでに色々くっついてきて、壮大なツアーになってそうで嫌だ。

 にしても、明日これば分かるか。

「明日だったら日向連れてきてもいいぞ。最も、あいつはいい返事しなそうだがな。ハハハ!」

 強面ではあるけど、愛嬌のある笑い方をする。その姿はとても魅力的であった。ここが連日賑わってるのは、この人の人徳ってやつだろうか。俺にもそんなのがあれば上手くやっていけたんだろうな。

 今更無い物ねだりをしても仕方ない。でも、あいつになくて俺が持ってるものって何だろう。それが見つかればこの劣等感から解放されるのかもしれない。

 明日、頼んでみっか。

「じゃあ、店長。長話聞いてくれてありがとうございました。また明日」

「おう!忘れずに来いよ!」

  店長はいつでも元気だ。こっちも笑いたくなってくる。

 今度、そんだけ元気な秘訣でも聞いてみよう。

 帰りたくない家ではあるけど、寝床はあそこしかないため、戻ることにする。

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