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ひまわり畑  作者: otsk
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ターゲット(2)

 ターゲットを探せ、二日目。

 事前に春乃に確認を取ってもらっている段取りのため、連絡を取ったが、一言「変なやつだった」とだけ。写メも特になし。どんなやつなんだ。岡崎。

「気になるね〜」

「夕夜にいたっては返信すらなかったな」

 待ち続けるのも面倒だから、返信がなかった時点で見限ったけど。

「もしかしたら、今来てるかもよ?」

 メールの受信欄を見る。

 メール受け取り件数……25件。

 おかしい。迷惑メールの類は一切来なかったはずなんだが……。

 新着の一番最初は夕夜から来ていた。

 あいつのやつはスルー。

 残り24件。

 嫌な予感しかしない。てか、名前非表示だし。

「何なんだ?」

「どうしたの……うわ、すごいメールきてるね」

「一番古いやつから見てくか」

 時間は0時前。ちょうど寝静まったぐらいに来てたみたいだ。気づかなかった。

「迷惑メールとか?」

「いや、違うと思うけど」

 とりあえず、開いてみる。


 お兄ちゃん、メアド変えたから折り返し連絡してね

  向日葵


「あー私のところにも来てた。いや、私もさっきしたけど、そんなに来てなかったよ?」

「これ以上はヤンデレ化した妹の未来しか見えないから、潔くこれだけに返信しておこう」

 途中は省くとして最後に来てたやつだけ見ておくか。


 お兄ちゃん、だい


 途中で途切れて送信してしまったようだ。大方寝落ちしたんだろう。最後に届いてたのは2時前だったし。あいつ、そんなに起きてたら肌に悪いぞ。それにしても『だい』?

「向日葵ちゃんだし、大好きじゃない?」

「大嫌いだったらどうするんだよ。立ち直れないよ、ぼく」

「全部見直せばわかると思うけど」

「下手したら『お兄ちゃん、die』だったかもしれない……。嫌だ、そんな現実は直視したくない……」

「だったらわざわざ平仮名で書く必要もないと思うけど」

 一応、まだ時間はあるので全部見直すことに。すぐに返信がくるものだと思っていたのか、かなりだった。全部を書き記すことは無理なので、ここにとりあえずすごかったとだけ言っておこう。うん。結論はお兄ちゃんっ子だという話。最後のやつも『大好き』でいいだろう。ぼくのほうも大好きだと送っておこう。

 後ろから微妙に視線を感じたし、若干冷や汗っぽいのも流れていたような気はしたけど、これはlikeのほうだよ?いや、広い意味で考えればloveのほうになるかもしれないけど。そこはまあ、相手次第ということで。


 ーーーーーーーーーーーーー


 岡崎を探せpart2。

「急に議題っぽくなったな」

「そもそもお前が朝に返事しなければ微妙な気分になることはなかったんだ」

「何の話だよ」

「向日葵がお前よりぼくのほうが好きだという話」

「えー」

 あながち間違いではないとぼくは自負する。話を持ちかけるまでは、ぼく以上に魅力的な相手はいないと言ってたぐらいだし。でも、恋は盲目と言うし、いつかこいつのほうがぼくより魅力的になる時が来るのか?

「いや、ないな」

「一人で自己完結しないでもらいたい」

「向日葵のことは今は置いておこう。語って欲しいと言うなら、日が暮れるまで語ってもいいけど」

「日が暮れても終わりそうにないから遠慮するわ。あんたは向日葵ちゃんより先に愛花のこと考えなさい」

「わ、私は別に構わないから」

「もちろん、愛花のことも大事だぞ」

「ひ、ひなちゃん」

「どうでもいいけど、ここ教室ということを忘れてるわよね」

  恥?外聞?そんなものはとうの昔に捨てました。そんなもんがあったら、向日葵を守ることなんてできやしなかったからな。誰かを守るためなら、自分のことは二の次にしなくちゃいけない。恥や外聞なんてかなぐり捨てりゃいい。

「で、岡崎は?」

「あたしは校内で携帯を使いたくなかったから、夕夜に連絡先を教えておくように言ったんだけど」

「ああ、朝起きた時に気付いて送った」

「悪いが、全く見てない」

「見てくれよ!」

  朝に送る奴が悪い。というか、色々間が悪い。まさか、向日葵から大量のメールが届いてるとは思わなんだ。

「授業は出てるだろ?」

「そこはただの学生だし、特待だからって一般生徒と何ら変わりないわ。授業料が免除だったかしら」

  うちは私立高なので、授業料がかかります。特待生はそういうのが免除だったり、軽減だったりあるとか。

「ぼくも貰おうと思えば特待生貰えたんじゃないか?」

「あんたの場合素行不良が原因でハネられるわね」

「ちくしょう……」

  思わぬ弊害part2。

「日向は岡崎にあってどうしたいの?」

「春乃はなんか聞いた?」

「会いたい奴がいると言っておいたわ。女の子だと思ってるみたいだから、期待はしないようにと言ったけど」

「なんか告白しに行くみたいじゃん……」

  本来の目的を見失いつつあるけど、ぼくはただ単に岡崎に会いたいわけじゃない。岡崎 祭に会いたいのだ。

「結構可愛い顔してたわよ」

「男だって話だよね……」

  そりゃ、女の子よりの顔してるとは言ってたけど、何より実物見てないし、夕夜からメールが送られてたけど、教室で見るわけにもいかない。結局前情報なしで会いに行くのか。

「今日バイトは?」

「夕夜だけ」

「立派なケーキ職人になってやるぜ!ゆくゆくはウェディングケーキを自分で作り上げたい」

「経費削減になっていいかもな」

  あれいくらぐらいかかるんだろう。ぼくの時もこいつに頼めば経費がいくらが削減できるかも。相手は……。

  横目で彼女を見る。楽しそうに笑顔を浮かべていた。ぼくはそこまでたどり着くことができるんだろうか。早くても高校を卒業するまでにはまだ、3年はある。結婚か……。まだまだ先の話だよな。

「じゃ、今日は放課後に会いに行くか。化学室に行けば会えるよな?」

「俺は〜?」

「立派なウェディングケーキを作るんだろ?」

「おう!お前のやつも出血大サービスで作ってやるぜ!」

「期待してるわ」

  とりあえず、部室にも顔を出しとかないとなと思いつつ、次の授業のチャイムが鳴った。

  色々クサイ台詞を吐いていたので、噂が立っていたが、愛花に変な虫がつかないならそれはそれでいいや。


 ーーーーーーーーーーーーー


 場所は変わって、文芸部部室。

「いらっしゃい」

  すでに座ってコーヒーを啜ってる人が一名。

「早すぎるでしょ」

「一年の棟よりは近いから。まあ、どうとでもなるわ」

  この学校は一年、二年、三年と棟が分かれている。各棟に特別教室もあるぐらいだ。どこにそんな金があるのかは知らない。

「結局、ぼくらは学校側の手の平で踊らされてるに過ぎないのか」

「何か、一大事でも起こすつもり?擁護しきれないから問題を起こした時点で退部扱いにするから」

  血も涙もない。元より問題なんて起こすつもりはないけど。

「で、今日は何かしら?」

「まあ、部活ですし、部員が顔を出してもおかしくはないでしょう」

「それもそうね。しばらくは私一人で活動してたからこういうのって新鮮で」

「あの〜部長さん。あとの人は?」

「ああ。ゴミね。いなくてもなんら問題はなくなったから退部扱いにしようかしら」

「どんな人なんですか……」

  この人一人で権限を持ち過ぎてるようにも思えてきた。この人、裏から学校操ってんじゃない?

「まあ、確かに伝言といえば伝言もあるのでついでに」

「活動はしないのね」

  ふぅ、と一息つく。何だが、哀愁が漂う年上って感じだけど、別にぼくたちと二つしか変わらないのに何だろう。この人の持っている雰囲気というのは。

「そういや、春乃と夕夜、入ったんでしょう?」

「ええ。えと、弥富くんは週5日のバイトで多忙とあるけど、彼は一体何を目指しているの?苦学生というわけでもあるまいし」

「ケーキ職人だそうです」

「まあ……そう……」

  なんか、釈然としない表情。確かにあいつの顔でケーキ職人とか言われてもギャグにしか思えない気がしてきた。でも、あいつも本気でやるみたいなので、笑うことはしない。

「ぼくも、同じとこでバイトして……というか、今入ってる奴ら全員同じとこでバイトしてるんで、よかったら来てください。店長の機嫌がよければ割引きするかもです」

「それは私にぶくぶく太れというわけかしら?」

  曲解し過ぎ。善意なのに裏があると考えられるのは悲しい話だ。

「まあ、そこは自分でコントロールしてください。それより、そんなにぶくぶく太るほどの財源があるんですか?」

  しまった、といった表情で口を抑えた。何かマズイことだったんだろうか。

「まあ、私のことは置いといて、旭くんはいつが出れないのかしら?」

「基本的には火曜と金曜です。週3日のシフトなんで」

「あと一日は土日のどっちかというわけね。守山さんも一緒かしら?」

「あ、はい」

「皆、若くていいわね」

「何をそんな年寄りみたいなことを」

「実際、三年生なんて年寄りよ。高校卒業したら大学生やら社会人になる。旭くんは中学生の延長みたいな高校一年生とそろそろ社会人になろうという三年生とどちらが若く見えるかしら?」

「極論ではありますけど、部長も美人だと思いますよ」

「褒めても何も出ないわ。用はそれだけかしら?」

「まあ、そうです。明日はちゃんと活動しますんで」

「今日はどこへ?」

「ちょっと化学室に」


 ーーーーーーーーーーーーー


  化学室にたどり着くと楽しそうに談笑してる女子が三人。岡崎はいないのか?

「愛花、春乃」

「ひなちゃん遅い!」

「ちゃんと連絡事項を伝えに行ったんだから、責めるな」

「おっと、君が守山さんの彼氏とかいうやうかい?」

  ぼくを見るなり、体をジロジロと見始めた。何なんだ?

「70点」

  いきなり点数つけられた。何が基準だ。

「身長、体格、顔、雰囲気……性格は初対面では測りようがないからそれらを総合した初期点数と考えてくれよ」

「はあ……ちなみにお前は?」

「100点に決まっているだろう」

  何を決まり切ったことをみたいな顔で言われても困る。判断基準はお前なのか。

「ついでに平均はどれぐらいなんだ?」

「僕主観ではあるけどこんなものだね」

  よく分からない、こいつ基準の数値が出されている。平均とぼくの値が比較されて出されていた。ぼくの身長の評価は-12。

「ちょっとお前のデータ見せてみろ」

  部用のかなんか分からないが、ノートパソコンをひったくる。

「何すんだよ!返せよ〜」

  ジタバタと暴れてるが、幾分背が低いので相対的に腕も短い。ぼくのリーチでも押さえつけることが可能だ。机に置いて、顔面を押さえつけながら、クリックしていく。

「なんだあ?お前の数値、平均より+30って」

「+の最大値です」

「お前身長は?」

「プライバシーです」

「155だって」

「お前のプライバシー皆無だな」

  というわけで、感づいたと思うけど、女の子だと見たとき思ったこいつが岡崎というわけだ。確かに変なやつだ。

「ちくしょう。背の高いやつなんて嫌いだ」

「お前が低いだけだと思うけど……」

  大体日本人の平均が170ぐらいだし。

「で、話があるんだけど」

「お前みたいなやつに話すことなんてないね」

  嫌われたもんだ。どうにも男とは相性が合わないというのがぼくの常である。女の子だと合うのかと言われるとイエスとは言えないのがぼくの悲しいところ。

「岡崎くん、ちょっと聞いてあげて」

「守山さんが言うならしょうがない」

  なんか、ムカつく。

「えーと、岡崎。フルネームは?」

「岡崎凛太郎」

「兄弟とか親戚とかに祭って名前の人いる?ぼくたちと歳が離れてない」

「ん〜、いないな。どうして?」

「とある小説の作者なんだけど、この学校にいるって噂でさ。名前が岡崎祭って言うんだよ」

「小説の作者ねぇ」

「なんだ?心当たりでもあるのか?」

「いや、ペンネームって可能性があると思うんだ」

  三人ともなるほどって顔で納得。その可能性は配慮してなかった。まあ、小説書く時の名前なんか本名である必要はないし。学生なら、さらに隠すためにそうしてる可能性はあるか。

「どうするか。いきなり八方塞がりだ」

「まあ、その岡崎祭って人の本名は知らないけど、調べることなら可能だよ」

「どうやって?」

「何のためのこれだよ?」

「調べてくれんの?」

「いや、ぼくには無理だね。そこまで詳しいわけじゃないし。このソフトを作ったやつだよ。情報屋でさ。一個上だけど、話通しておくから明日にでも行ってみてよ」

  そんなこんなで岡崎凛太郎と知り合いになった。そして、いつのまにか登録されているあいつの連絡先。使う機会はあるのだろうか。

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