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 今でも瞳を閉じるとあの日の風景が蘇る。


 桜吹雪が枚散る中、サラサラの長い髪を手で押さえて、君は泣きそうな顔で振り向いた。


 行かないで と



 僕も君と離れるのは寂しかったよ。


 置いて行くのは辛かったよ。



 でも僕は、君を置いて去ってしまった。今でも悔やんでいる。今でも夢に見る。


 会いたいと……思うよ。



 月日が流れ、あの大きな桜の木は朽ちて倒れてしまった。


 君はあの日のまま若くて綺麗で幼いまま。


 君の時は止まったまま。




 置いて行かれたのは、僕の方だったんだね。



 今でも君は、あの大きな桜の木の下に 立っているのかな。


 今でも君は桜吹雪の枚散る中、乱れる髪を抑えて、薄桃色の花弁を眺めているのかな。



 一緒に行こうと言えば良かったね。


 その言葉を伝えていたなら、僕たちはどんな未来を歩んでいただろう。



 今更だけど


 来るはずの無い未来を、思い描いている。



 愛しているよ、愛していたよ。


 この声は届かない。









 あれから何年経ったのかな。



 僕は都会の喧騒にまみれ、心も体もすっかり汚く染まってしまった。


 立ち止まることも忘れ


 毎日日々の生活に追われている。


 振り向く事もしないで。



 前に進むしか無いと思った。立ち止ってはいけないと思った。


 思い出したく、なかった。



 あの日知らされた、君の真実。秘めていた宝は掌から零れ落ちた。


 君と僕の距離は広がるばかり


 僕だけが 歳をとって行く。



 やっぱり、置き去りにしたのは僕の方かな。





 君に、逢いたいよ。


 声が聞きたいよ。


 君に、触れたいよ。











 今でも君は あの大きな桜の木の下に 立っているのかな。


 一緒に 行こうと言えば良かったね。


 その言葉を伝えていたなら、僕たちはどんな未来を歩んでいただろう。



 今更だけど


 来るはずの無い未来を思い描いている。



 愛しているよ、愛していたよ




 この声は届かない









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