1−3
目が覚めると、私は冷たい床に寝転がっていた。
とてつもなく長い間、眠っていたようだ。目を開こうにも眩し過ぎてなかなか開かない。
重い目をこすりながら辺りを見渡す。そこには白の世界が広がっていた。
360°見回しても白一色である。この部屋はかなり広くて、天井までも白い。
蛍光灯が規則正しく並んでいる。この空間には窓がない。
ここはどこだ!
そう思って立とうとすると、後頭部に痛みを感じた。すごく痛い。しかしながら、昨夜飲んだ記憶はない。
というより、少し前までの記憶がない。ここにどうやって来たのだろうか。連れて来られたのか、自分で来たのか。
答えは簡単である。私は自分で言うのもあれだがとても美人だ。だから、私に惚れていた誰かが、私を攫ってここに連れて来たのだ。そうに違いない。問題は解決した。これで安心だな。
何て言ってる場合ではない。
ふと足下を見ると赤いトートバッグが置いてある。
このカバンには見覚えはないが、カバンをひっくり返してみる。
すると、筆箱、メモ帳、手鏡、眼鏡ケース、電子辞書、ライトノベル。そして、持っているだけで銃刀法違反になりそうなくらい刃渡りがある大きなハサミが入っていた。
これらは誰のものなのだろうか。怪しい匂いがプンプンする。その一方で、何か期待している私がいる。
とりあえず辺りを見に行こうとしたが、コンタクトレンズをしていないことに気づいて、眼鏡ケースの中にあった眼鏡を借りてもう一度部屋全体を見てみる。すると、この部屋が長方形であることがわかった。
そして、その四方の壁に白いドアが一つずつあった。
執筆者・にしがき こうた