29 闇魔法は地味
「それじゃあ、今日は概要として闇属性を纏うと具体的に何が出来るのか説明しまーす」
闇属性は、イメージし難い。それは行使者が少な過ぎる事もあるが、地味過ぎるのも原因らしい。
「とは言っても、今この中で闇属性魔法を使えるのは、シリウス君だけなので、必然的に実験はシリウス君にお願いしちゃうかもしれません。ごめんねー」
「そう言う事なら、喜んで協力します」
「ありがとー。ほんとあなたってお人好しよね! でもね、あなた、それにユーベル君もここではやっぱり異分子みたいなのよねー。どうも彼女達二人とも、あなた達を仲間として認めていないみたいだから」
不意に振り向くと、ルーシアが俺に、そしてルアンはシリウスにそれぞれ戦闘態勢をとっていた。
どう言う事だ?
状況が全く分からなかった。
攻撃をどうにかして止めさせるには、どうしたらいい?
「ルーシアさん、止めて下さい!」
「ルアンさん、こんな事は止めて下さい!」
「……」
だが二人ともまるで意に介さず。
こうなったら、武力で制するしかない。
俺はシリウスと頷き合った。
だが、その刹那、
「ルーシアちゃん、ルアン君、そこまでよ。誘導解除!」
すると、好戦的だった二人は、一旦気を失ったようだが、すぐに正気を取り戻した。
「シリウス君、ユーベル君、分かったかしら? これが闇属性魔法の地味に恐ろしいところよ」
まさか、ソニン先生が?
「わたし、シリウスさんに何で事を……」
「ユーベル君、すまない。僕はなんてバカな事を」
「あなた達は謝らなくていいわよ。犯人はあたしなんだから。でもねー、まず闇魔法の怖さをまず皆に体験してもらう必要があったんだ」
「つまりは、同士討ちって事ですか?」
「その通りよ。陰険であたしが最も嫌うやり方よ。でも、闇魔法を理解する上で否応なしに通過しなきゃいけないのもまた事実なの」
「俺も、シリウスも先生がルーシアさんと、ルアンさんに何をしたのか全く気がつかなかったんですが、いつ魔法を?」
「″ソニンちゃん、全力出すから皆仲良く頑張ろう!″の掛け声の時だよ。この言葉なら、皆必ずあたしの目を見るでしょ? それがこの闇魔法の発動条件なの。具体的には、さっきルアン君が言っていた思考誘導よ」
ルアン君は、自ら言及するほど、思考誘導を警戒していた。
それでも利用されてしまうなんて。
「だから、実際は4人に同時に思考誘導が発動したはずなの。思考誘導はね、ある目的を設定するだけ。後はかかった対象がその目的を達する為、一番的確だと思う手段で実行に移すの」
「では、目的と言うのは?」
「″自分にとっての危険分子を排除しなさい″よ。ルーシアちゃんは、ユーベル君、ルアン君は、シリウス君をそれぞれ最大の危険分子に設定したようね」
「僕もかかっていたのでしょうか?」
俺もかかっていたはずだが、正気は保っていたな。
「シリウス君は自身が闇属性を持っているから耐性があったのだと思う。ユーベル君は……さっぱり分かりません」
俺混乱してたら、この人どうするつもりだったんだろう。
「とにかく闇魔法の怖さを身体で味わっておくべきだったの。これには理由があってねー」
「理由?」
「うん、実は1回かかった人には、耐性が出来て2回目はほぼかからないショボい魔法なの。つまりは、初手必殺魔法」
ルーシアさんも、ルアン君も闇魔法に対する対処が授業の目的だったから、ソニン先生はそれを実行したんだな。
「ちなみに闇属性持ちの人が極端に少ないのは、申告していないからだと言われているわ。相手が闇属性持ちだってあらかじめ分かっていたら、思考誘導とかの魔法もほぼ失敗しかなくなるからね。その点、シリウス君は素敵ねー。自分でさっぱり申告してるもの。だからと言って闇属性のこの授業は強制でとるなんて決まりはないわよ」
「なるほど。じゃあ僕はもう闇属性魔法持ちだからって怖がられる事はないんですね? 安心しましたが、そうなると、この闇魔法属性って僕にとって何も意味がなくなりますね?」
闇属性魔法は、ほぼ対人戦に特化した感じだ。
精神攻撃を主にしているから。
初手だけが恐ろしいと言う特徴を除けば地味と言う以外ないな。
「シリウス君、それがそうでもないのよー。いえ、今まであなたは、自分には魔法資質がないと思い込んでひたすら剣術を磨き上げたのよね? それが生きるの。いえ、むしろそれが闇魔法の一番の有用性になるわ」
シリウスは、10歳の魔法属性測定では、俺同様魔法資質ゼロだった。
そして最近分かった潜在下での属性獲得。
おそらくは、ソニン先生ほど、しっかりした魔法は使えないだろう。
それでも、有用出来る方法があるのだろうか?
「僕が闇魔法を有用に使える? そんな事があるのですか?」
「うん、だからあなたがこの授業を選択した事は、間違ってなかったって事。だって先生がこの素敵なソニンちゃんなんだもの」
「……」
「対人戦に特化した闇魔法。他にどう使えるのか、わたしは気になります」
「僕も、武術は苦手だけど、凄く気になります。少なくともこの授業聞けて良かったです」
「ルーシアちゃんも、ルアン君も見込みあるわ。ありがとー。じゃあ、シリウス君、今からあたしのとっておきを教えちゃいます!」
不思議な事にソニン先生が可愛く思えてきた。




