第4話 幸せに向かう
スーパーの正社員になった時、父の真は本当に嬉しそうだった。
「せめて二年は続けてくれ」
「お前を初めて、頼りになる息子だと思えたよ」
……甘いな、と思った。
でも悪い気はしなかった。
その日、傑と傑の母親を家に連れてきた。
「父さん、母さん。紹介するよ」
「これから結婚を前提に付き合う女性と……俺の息子になる傑だ」
母は目を丸くした。
「本当に……うちの息子と付き合ってくれるの?」
傑の母親は、少しだけ照れながら頭を下げた。
「はい。彼は……息子のために、ずっとピエロになって友達でいてくれたんです」
俺は笑って言った。
「だから言ったでしょ」
「俺だって彼女くらいできるし、子供だってできるって」
これは終わりじゃない。
始まりだ。
ここから先は、きっと大変だ。
傑の父親として生きることも。
正社員として安い給料で踏ん張ることも。
傑の母親の依存症と向き合うことも。
彼女の中に残っている元旦那への未練を消していくことも。
全部、簡単じゃない。
姉も知らせを聞いて帰ってきた。
「……頑張りなさいよ」
それだけ言って、笑った。
昔、父が言っていた。
「野良猫に一度エサをやったなら、最後まで面倒を見ろ」
「途中でやめるのは偽善だ」
俺は傑を助けた。
自分の都合で。
だから最後まで面倒を見る。
結果として、
自慢できる息子になるかもしれない傑と、
アルコールと戦いながら、それでも一途に生きようとする女性と、
家族になれる。
なら悪くない。
傑のためにも。
傑の母親の婚約者としても。
俺はやるしかない。
責任感?
昔の俺なら逃げてた。
でも今は違う。
それが起爆剤になってる。
過去のトラウマ?
元引きこもり?
現実逃避癖?
今なら言える。
俺は変わった。
弱かった自分はもういない。
今の俺は強い。
人間関係も、もう怖くない。
耐えられる心がある。
母は孫ができるかもしれないって喜んでる。
父も、少しだけ誇らしそうだ。
傑は二年間ずっと家に来てた。
だからきっと大丈夫だ。
人生は、どれだけ底に落ちても、
自分次第で変えられる。
未来は分からない。
でも、不安ばかり考えても仕方ない。
俺は――
幸せを見つけたんだ。




