01.婚約の継続をされたいのですか?
婚約破棄という名の断罪劇は、失敗で幕を閉じた。
残されたのは一人の乙女と、彼女を愛する王太子と側近達。
それから彼らの婚約者達。
変わらぬ淑女の微笑みに薄ら寒さを覚えるのは、その目が笑っていないせいか。
彼女達の中で最も高貴な者、公爵令嬢グリゼルダ・ヴァンライヒが一歩前へと出る。
彼女の視界に映るのは、浅慮で愚かな男達。
だが、彼らの裏切りに憎む気持ちも、失われた信頼に嘆く心も必要ない。
「どうやら皆さま、ご自身の立場についてご理解されたご様子」
様々な感情を浮かべる関係者に囲まれた中、王太子は慌てて乙女を遠ざけた。
あれほど愛していると、新しい婚約者だと紹介したばかりだというのに。
それを見て、笑みを深くしたグリゼルダを、側近達が「悪女」と罵ったがどうでもよい。
「思い直される方も、その愛を貫きたい方もいらっしゃるようで」
僅かに傾いた笑顔に、煽られた者のこぶしが震える。
だが令嬢達は誰一人として気にした様子はなかった。
「私達の婚約は家のために結ばれたもの」
その言葉に希望を見出した、期待に満ちた目を向けられながら、「ただ」と言葉を続ける。
「もし、家同士が望むならば、婚約継続は構いませんが」
全ての視線が自分に集まったことを確認しながら、あくまで淑女らしく笑みを絶やさない。
次の言葉を待つ静まり返った場に、鈴のような声が落ちた。
「私達からの条件は聞いてくださるのかしら?」




