婚約破棄された悪役令嬢、秘奥義☆宴会部長で王城を制圧する
「今……なんとおっしゃいましたの……殿下?」
「今一度言おう!
親が決めたとは言え、幼き頃より結婚を誓った相手であるエリザベス、そなたに!」
雰囲気、宝塚。
どこからともなく金色の照明。
階段。
謎のオーケストラ。
「幼い私達は、あの芳しき薔薇の園にて将来を誓い合った!
それから十年!私は出会ってしまったのだ!
そう……真実の愛!
運命の恋人、愛しき乙女に!」
アルフレッド王子は胸を張り、マントを翻す。
翻しすぎて一回転したが、誰も突っ込まない。
「あぁ……アルフレッドさま……!」
白百合の乙女・シャルルが、涙を一滴だけ落とす。
「私が!シャルルがいけないのです……!
たとえ、私とアルフレッド様は運命の愛であろうとも!
貴方様には既に未来を誓い合った方、エリザ、えっと……エリザベート様がいた……!
それなのに……私はあなた様への想いをとめることができませんでした。
そう……すべては私が悪いのです……!
私とアルフレッド様が出会わなければ……そうすれば、エリザベート様が嫉妬に狂い、その手を罪に染めることもなかった……!
すべては私が悪いのです……」
(※なおエリザベスの具体的な罪状はまだ出ていない。)
(※更に、エリザベートでは無くエリザベスである)
「そのようなことはない……!」
アルフレッド王子、大袈裟な仕草で天を仰ぐ。
「わが愛しき白百合の乙女よ!
すべては己の醜い心を律することのできなかったエリザベスの罪……!
出会ったことが罪だと言うならば、私は神の裁きを受けても構いはしない!
そなたと二人ならば、どのような苦難も責め苦も耐えてみせる!」
「アルフレッドさま……!」
「シャルル……!」
ここで通常なら、悪役令嬢は顔を歪めるのだろうか?
それとも、「キーッ!」と叫び、床に崩れ落ちる?
いいえ、答えはNOオンリー。
「……お静かに」
エリザベスの放ったその一言で、空気が真空になった。
「「……え?」」
アルフレッド王子が瞬きをする。
シャルルの涙が途中で止まる。
貴族たちのざわめきがミュートされる。
「宝塚ごっこは、お済みで?」
エリザベスは微笑んでいた。
完璧な貴族令嬢スマイル。
だが……ドリルヘアーが、唸っている。
ギ……
ギギギギギ……
「な、何だ……あの音は……」
貴族の誰かが呟いた。
「長年……この日のために……」
エリザベスは、ゆっくりと両手を頭へ。
「え、まさか……」
一人の淑女が察する。
「鍛えてまいりましたの」
――ガシッ
エリザベスは自分のドリルを、自分で掴んだ。
「なッ!?」
アルフレッド王子、初めて素の声。
「悪役令嬢には……」
エリザベスは低く告げる。
「“最終形態”が必要ですもの」
――バリィィィン!!!
豪華絢爛・悪役レイ式☆縦ロール式ドリル、
完全パージ。
中から現れたのは……七色アフロ ☆
「「「「なにぃぃぃぃぃ!!??」」」」
壁の花ならぬ背景になっていた貴族全員、ハモって叫ぶ!
「ご紹介いたしますわ」
背景の叫びなど何のその。
エリザベスは優雅に腰を落とし、構える。
「これが我が一族に伝わる――」
ズン!チャッ!ズン!チャッ!
どこからともなく、ディスコの鼓動。
「秘奥義……
《伝説の宴会部長》ですわ!!!」
七色アフロが光を放つ!
回る!
跳ねる!
分身する!
「ま、待てエリザベス!
これは婚約破棄の場だぞ!」
アルフレッド王子が後ずさり、シャルルの涙は乾いて頬は引きつる。
「ええ、存じておりますわ!」
エリザベス、キレのあるステップを披露しながら華麗に素敵なポーズで答える。
「ですから――」
ドン!!
まさに俗に言うジョ〇ョ立ちである。
「空気、殺した責任を取っていただきますの」
「え?」
「さぁ!」
エリザベス、指を鳴らす。
「泣くなら最後まで泣く!
愛を語るなら最後まで語る!
その上で――」
ドドン!!
「盛り上げてから帰りなさいな!!!」
いつの間にか、
貴族Aがタンバリン。
貴族Bがマラカス。
貴族Cが謎のステップ。
「アルフレッドさま……」
シャルルがわなわなと震える。
「……シャルル……」
アルフレッドは輝く王子様スマイラルも消えうせ、汗だくだくだ。
「これは……試練か……?」
「違いますわ」
エリザベスは満面の笑み。
「これは――現実ですの」
七色アフロが、天井のシャンデリアと共鳴からのフィーバータイム!
後世、人々は語る。
エリザベスの七色アフロが、ピカァッと一段階輝度を上げた瞬間!
ドォォォン!!
王城の天井を突き破らん勢いで、花火が自動発射された。
「なっ……!?」
アルフレッド王子が仰天する。
「仕様でしてよ!
祭りに花火は付き物ですわ!」
エリザベスは涼しい顔でステップを刻み、華やかな羽扇を振り回し、華麗なダンスを披露する。
「《秘奥義☆宴会部長》は、発動者の感情の高まりを感知すると――」
ドン!パァン!ヒュルルルル……バァァン!!
赤!
青!
金!
ハート型!
「自動で祝いますの」
同時に――
ギュイィィィン……
天井から降りてきたのは、直径三メートルはあろうかという巨大なミラーボール。
キラキラキラキラキラキラ……
光が無差別に、容赦なく全員を照らしていく。
「ミ、ミラーボールまで!?」
貴族が叫ぶ。
「オートですわ」
エリザベスはウインクした。
「止まりませんの」
ズン・チャッ・ズン・チャッ!
テンポが一段上がる。
そのとき――最前列が、動いた。
「よっしゃあああ!!青春だぁぁぁ!!」
誰よりも先に飛び出したのは、
エリザベスの父――
悪役令嬢父こと宰相であった。
「ま、まさか宰相が!?」
「伝説のリンボー☆エドワード再びっ?!」
貴族たちがざわつく。
「娘よぉぉぉ!!
父は信じておったぞぉぉぉ!!」
宰相、年齢を完全に忘却。
キレッキレのステップでスライディング。
腰が壊れそうだが、気にしない。
「あなた!私たちも行きますわよ!!」
国王妃が清楚なドレスを翻し、国王の手を引いた。
「えっ、わ、私はちょっと……!」
国王、抵抗。
「青春ですわ!!」
「うおおおおお!!」
しかし次の瞬間。
国王夫妻、最前列センター確保。
「若い者には負けんぞぉぉ!!」
国王、金髪を振り乱しながら無駄にハイキック。
「あなた、膝!」
「気にするな!!今は十七歳だ!!」
宰相と国王が、謎のシンクロダンスを始める。
「誰だ……
あの二人に酒を出したのは……」
素面な誰かが呟く。
「私ですわ」
エリザベスは即答した。
後方では、
貴族令嬢たちがキャーキャー言いながら回転し、
騎士団が隊列を崩してヘドバン。
「アルフレッドさま……!」
シャルルが呆然とする。
「……シャルル……」
王子は完全に取り残されていた。
「これは……婚約破棄……だったはずでは……」
「ええ」
エリザベスは踊りながら言う。
「でしたわね」
クルッ。
指パッチン。
ドォォン!!
追加花火点火。
「ですが今は――」
ミラーボールが最大出力。
王城が銀河になる。
「宴ですの」
宰相が叫ぶ。
「娘よぉぉ!!最高だぁぁぁ!!」
国王妃が笑う。
「エリザベス、今度は社交界でもやりましょう!」
国王が親指を立てる。
「よい!非常によい!!」
――こうして。
婚約破棄の場は、
国を挙げた青春リバイバルフェスへと変貌した。
後日、歴史書にはこう記される。
この日、王城で起きた事件は婚約破棄ではない。
国家規模の宴会事故である。
そしてその中心にいたのは……
七色アフロの悪役令嬢
秘奥義☆宴会部長。




