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異世界ラーメン屋台戦記~俺じゃなくて屋台がチートスキル持ち!? 借金完済しないと俺が死ぬ!?~  作者: 夢野又座/ゆめのマタグラ
第1章 ラーメン屋台店主、異世界に立つ

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6.ラーメン屋の矜持


 客もほとんど捌き切った頃――オッサンと、副官の兄さんが屋台へとやってきた。

 ちなみに影分身は既に効果切れで、分身の俺と吉備丸は消えている。

 

「……繁盛しているようだな」

「全く。こんな得体の知れない人間が作った、訳の分からない料理を嬉々として食べるなんて……」

「へいらっしゃい!」

「2人分だ」

「か、かしこまりました!」


 テーブルに着いた2人。

 俺は2杯分のラーメンを作り上げ、カウンターへと出した。

 すぐにエリクが丼を持ち上げ、テーブルへと運んでいく。


「お待ちどうさまです! ラーメン2つです!」

「ありがとうございます、エリクちゃん」

「ふん……騎士団に居た頃より、楽しそうだな」

「えっ、あっ、別に……」


 オッサンに睨まれ、縮こまってしまうエリク。

 エリクの身の上は、前に少しだけ聞いたことがある。


 代々王家へ騎士を排出する貴族、レイリーク家。

 病気がちで子供に恵まれなかった夫婦に、念願の第1子が産まれた。

 それがエリク――男児が産まれると信じて疑わなかった父親は、名をそれしか用意してなかったのだ。

 しかも本人は絵が得意なだけで、騎士としての能力は底辺。本来は半年で卒業する見習いを、エリクは1年続けている。

 

 だからなのかオッサンはエリクに対し、必要以上に距離を置いているように見えた。

 

「……ズルッ、ズルッ」

「……」

 

 オッサンは若干啜りながら、兄さんは音を立てずに上品に食べる。

 

「ほぉ……これは美味いな」

「えぇ。戦場でこれだけのものが食べられるなんて、兵の士気も上がりますね」


 先ほどまでの警戒もすぐにどこか行ってしまったように、機嫌良くラーメンを食べていく2人。


「そうだろそうだろ」


 俺もそこまでは調子良く頷いてたんだが――。


「して、彦丸よ」

「なんだいオッサン」

「お前は明日……()()()店を開く気だ」

「そりゃ当然、レティシア側だよ」


 俺自身の所属、というか身元保証人はマジカルーナだ。

 見届人として戦争の行く末は観察しないといけないが、それも戦争やってる最中だけだ。

 夕刻以降は俺のプライベートな仕事の時間。マジカルーナの代表にも許可は貰ってる。


「――聞け、彦丸よ」


 オッサンはラーメンを食い切ると、立ち上がり俺の前までやってきた。


「お前があのマジカルーナ出身なら、世論に疎いのも納得がいく」


 生まれも育ちも、異世界の日本だなんて口が挟める雰囲気じゃないな。


「あの国は、長らく立会国としてこの約定戦争に貢献をしてきた。それは自分からは決して戦争に参加しない中立国だからだ」


 それに関しては俺も知っている。

 全部代表から直接聞いた話だ。

 

「国土をほぼ持たず、しかし保有する戦力はあの魔王軍すら揺るがすほど――」


 回りくどい説明を続けるオッサンに、俺はしびれを切らした。

 

「何が言いたいんだ、オッサン」

「――我らが人類の未来のため、マジカルーナを味方に付ける必要があるのだ」


 席に座ったままの兄さんが、説明してくれた。

 

「……現在、魔王軍によって戦争に負け、従属となった国は3つあります」


 オーヴェストと戦っているレティシア共和国は、エルフや妖精が多く住まう国。

 国土のほぼすべてが山岳地帯。有翼人の王国、レイヴン。

 地獄へ最も近い場所にあるとされるアルマゲスト。アンデットやヴァンパイアの国。


「奴らの戦力は日に日に増大し、ついに我がオーヴェストまで攻め入るまでに強大となった」

「残った8か国の内、4か国で同盟を組み、これ以上の侵攻を食い止めようと国王様も動いてなさる」


 恐らく1つはマジカルーナだろう。

 

「ちなみに残る3か国は?」

「……帝国の連中は、動かんだろう。奴らはこの事態に静観を貫いている」

「ふーん」

「ここにマジカルーナが加われば、同盟は盤石のモノとなる」

「まぁ確かに俺はこの世界のことに詳しくないけどよ……」


 ちょっとした疑問。


「魔王軍に全部国が奪われたら、どうなるんだ?」

「……神話によると、この世界のルールを制定なされた創造主様が、こうおっしゃったとされています」


『このルールの下、世界をすべて統一できた者には――アタシに代わり、神となる権利を与える』


「てことは魔王は、神様になりたいって訳か」


 それで他の国も、全力で魔王に対抗している訳だ。

 あるいは、自分こそが神様へとなる為に牙を研いでいるか。

 

「そうだろうな。神となれば、この世界のルールも書き換える事ができる――魔王のことだ。きっと血で血を流す闘争と狂乱の世界とするに違いない」

「そっか……大変だろうけど、頑張ってな」

「おい彦丸!」


 チッ――と小さな金属音と共に、

 

「……その剣、本気か」

「ッ!?」

 

 いつ抜いたのか――喉元に、鋭い切っ先が向けられていた。

 エリクが息を呑むのが伝わってくる。

 

「本気だ。お前はどういう訳か、その若さで見届人の代理人を務めるほどの人間。お前を仲間に引き入れ、さらにマジカルーナと同盟を結ぶ必要があるのだ」

「剣を向けて言うセリフじゃねーな」


 両手を上にあげながら、少し自嘲気味に笑う。

 

「……返答は」

「……断る」


 そう言った瞬間、オッサンの柄を握る力が強まる。

 

「お前、それこそ本気か」

「本気も本気だよ。そもそも見届人ではあるけどよ、俺自身はただのラーメン屋の店主だ……国の代表を動かすほどのコネもねーよ。買いかぶり過ぎだ」

「……」

「魔王だの、人類の尊厳だのは、俺には関係ねえ。俺は、俺の目の前にいる客に美味いラーメンを食わせて、笑顔にしたい。それ以上も、それ以下もねぇ」


 俺はエプロンを外し、オッサンへと突き付ける。


「それが俺のラーメン屋としての、矜持(プライド)だ」


 オッサンは剣を鞘に納める。

 

「……分かった」

「ジーク団長!」

「お前がそれほどの覚悟があるというのなら、好きにすればいい――だが、最後に勝つのは我々オーヴェストだ」

「そうか……まぁ、お互い頑張ろうぜ」


 そのままオッサンはテントの方へと向かい、それを見守っていたエリクは一言も喋ることはなく――俺もまた、黙って後片付けをするのだった。



 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


  <戦績報告>

 

 オーヴェスト王国騎士団&民兵 300人


      VS


 ラーメン屋台『吉備丸』

 店主:最上彦丸


・勝利条件

◎300食分売り切ること:COMPLETE!

〇オーヴェスト陣営の胃袋を満足させろ:COMPLETE!

 

【総売上】

・ジルバ戦貨10枚×300食=3000枚

(ジルバ戦貨1枚=銀貨2枚で計算)

・銀貨換算:6000枚

・金貨換算:120枚


【営業経費(人件費・原材料費)】

・原材料費:銀貨600枚

・エリク給料:銀貨 50枚

・スラ子給料:銀貨 50枚

・経費合計:金貨14枚


【本営業・純利益】

・金貨106枚

※スキル代金(影分身等)は含まず。


【貯蓄】

・金貨10枚


【借金完済への進捗】

・残り奉納額: 金貨99,640枚

・今回の返済: 金貨 96枚

・奉納残高:金貨99,544枚


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



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