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三.帰宅利用者は如何に影響を受けたか –仙台駅–

 19時になった仙台駅では、ステンドグラスで有名な中央改札の前にホワイトボードが設置され、仙石線の運行見合わせのお知らせが掲示された。

 地方で有数の規模を誇る仙台駅では、このようなお知らせが張り出されることは珍しくない。しかし、雪にはまだ早すぎるし、雨も降っていないし、地震速報が出ているわけでもない。

 となると、大半の人間には関係ない、車両点検などの類であろうと、ほとんどの人は注視せずに改札を抜けていく。

 自分の帰る路線が対象かは、ホームに行ってから確認しても遅くはないだろう。そう考えていた帰宅者は多かった。


 17時から20時までの仙石線は勤務からの帰宅者のために、ほぼ10分おきに仙台に発着する。終点の石巻行きの列車は一時間に一本だが、多賀城塩釜方面をカバーする東塩釜駅まではかなりの数が運行している。

 仙石線の電光掲示板には、遅延を表す次の列車の表示が点滅で行われていた。

今のところ遅れながらも列車は到着、出発しているが、陸前高砂で停止している車両が動かないため、次の列車もその手前の福田町や苦竹駅などで列車は停止している。これでは乗車しても目的地までたどり着けるかは怪しい状況だ。

 時折スピーカーから現場をお知らせする構内報道が行われるが、今日の担当者はハズレ気味だったようだ。アナウンスを担当する駅員によって構内放送の聞き取りやすさは大分差異がある。今日の担当者は慌て気味なのを差し引いても、滑舌が良くなく、必要な情報は聞き取れなかった。

 仙石線のホームには人が集まり始めた。列車が発車しないと、たちまちホームは溢れ、改札の入り口付近まで人が押し出される事になる。スマホで情報を取れない高齢者が、何分かおきにホームの様子を監視するための駅員に状況を聞こうとしている。

 駅員も現場では復旧の予定も立っておらず、車両点検のためとしか答えられない。

本当はただの車両点検でないことも知っているが、答えられない。

仙石線ホームに配置された若手の駅員は、針の筵のようなこの担当箇所を一刻も早く交代して欲しいと考えてはいたが…

無理だろうなとも考えていた。

 仙台指令室は事故現場から上がる報告を基に、今後の運行計画の修正対応でそれどころでは無いだろう。

 日常と非日常、どちらも平常心で対処できるようになり、同僚たちの仕事を手伝えるようにならねばと、まずは目の前の乗客への案内対応を続けるのだった。


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