二.交通への影響は如何にして起こったか –陸前高砂駅–
ヒロシは勤務を終えて、車で帰宅する最中だった。彼の家は高砂の北部にあった。
名取の勤務地から国道4号線、県道45号線を経由して、陸前高砂駅を通過して左折、仙石線の踏切を越えて帰宅する予定だった。
18時42分、踏切への交差点を曲がってすぐのところで、車は全く動かなくなった。
先程からけたたましい踏切の警戒音が止まらない。踏切が開かないのだ。
この踏切は陸前高砂駅に下りの列車が止まっている間は基本的に開かない、いわゆる「開かずの踏切」になってしまう。このままでは進むも引くもままならない。
また車両の点検でもしているのか?
ヒロシも仙石線のトラブルの多さは知っている。車両故障での遅延は頻度は高くないが数ヶ月に一度は通勤中にも発生しており、友人知人の移動に影響が出る。
しかし今回は5分経っても10分経っても踏切が開かない。
これは厄介な事になった。安全確認ではなく車両が本格的に故障したらしい?
多少無理でもUターンすべきか?
ヒロシがそう考えたのが早かったのか、あるいはサイレンが聞こえてきたのが早かったのか。
サイレンは三種。パトカー、消防車、救急車。
全ての緊急車両が混み合った駅前に次々と集結してきた。
元々左折できない車両が溢れて混雑気味になっていた、県道45号線陸前高砂駅前は、緊急車両の侵入でさらに大混雑となった。駆けつけた警察官が交通整理を行っているが、現場の混乱は激しく、緊急車両が駅の駐車場に入るのも手間取っているようだ。
ヒロシは一旦エンジンを切り、ハザードランプをつけて、スマートフォンを取り出した。
これは何が起こっているのか、確認した方が良さそうだ。場合によっては引き返して迂回が必要になるかもしれない。




