ストーカーがくる
エピソード25 約400字のショートショート
いつもの帰り道。
それは、私の帰り道?
「あ~ぁあ、今夜はずいぶん遅くなっちゃったな」
そんな事をつぶやきながら改札に向かっている。
私はいつもの駅の改札を出ると商店街を抜け、居酒屋やスナックが並ぶ通りを足早に歩く。そこから先は、少し暗く、寂しい路地だ。
まただ。
私はしっかりと前を向いて歩いているけれど、もう、その足音に気が付いている。
この数週間、このあたりで私の後ろをつけてくる気配に気付いていた。どうにも気味の悪い視線、遠く、近く、でも間違いなく私の後ろにいる、いつもと同じ足音。
それが今夜、私のすぐ後ろに迫っている。
-はぁ、はぁ、はぁ、はぁ
初めて聞く、そいつの息づかい。
私は意を決して立ち止まり、後ろを振り返って言った!
「ふざけるなよ、あの女は、俺の獲物だ」
男は「チッ」っと舌打ちして踵を返した。
男の後ろ姿を見送ると、私は慌てて前を向き直った。
くそ、女を見失った。
だが、また明日があるさ。
今夜は帰るか。
「ちっ」
ストーカーがくる 了
大盛こもりの短編集。
がんばって毎日1本アップしたいですが、難しいですね。
でも、お気に召す作品が1本でもあれば、うれしいです。




