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宇宙人のサイズ

エピソード21 約2600字の短編小説


午後の授業は眠い地獄。

でも寝ちゃダメだ。ダメなんだ!


ダメなのに、なぜこんな事に。

 僕はカンカンとリズムを刻むチョークの音を聞きながら、ぼんやりと窓の外を眺めていた。


「空って、どこまでも青いなぁ」


 カンカンカンカン、カン、カンカン、カカカカ、カン・・・・・カン


 黒板で刻まれるリズム、青い空、教室の窓から入る風は心地いい。

 僕は少し眠くなってしまった。


「ねむ、やば、目が閉じる、あ、閉じる」


 真面目な僕は、授業中の睡魔と必死に闘った。

 でも、大体負けるんだよね。

 ガクっと首が落ちる。


「あーいかん、負けた」


 本当に真面目な僕は、何かを必死に考えてみることにする。

 ホントは授業に集中しろって話なんだけどさ。


「空は広いぞ、どこまでも、そしてその向こうには、無限の宇宙が広がってるんだ」

「宇宙人って、やっぱいるんだよなぁ、だとしたら」


 僕の頭の中に、宇宙人の姿が浮かんだ。宇宙人と言えばコイツでしょ、そう、グレイってやつ。


「だとしたら、どれくらいの大きさなんだろ?」

「テレビとか映画で見る奴って、大体人間くらいかな?」

「それか、ちょっと小さいか、ちょっと大きいか」

「どちらにしろ、ウルトラマンみたいなでかい奴、いないよね」


 僕は頭の中にもうひとりの僕をこさえて、会話するように考える。自問自答ってヤツだね。


「だなぁ、いないなぁ、でもさ、大きいヤツってどんだけ大きくってもいいんじゃね?」


 そうだろうか?もう一人の僕が疑問を呈する。


「どんだけ大きくってもって、それは限界があるでしょ!」

「へぇ、どんな限界?地球よりでっかい星があれば、それに見合った生き物がいたっておかしくないんでしょ?」


 それはそうだ、でも、でもだ。


「いや、やっぱりおかしい、だって、宇宙人だよ?ただの生き物じゃない。知的なヤツなんだから」

「だから?」

「だからさ、そんなでっかい、例えば身長100mの宇宙人がいたとして、そいつはどんな車に乗るの?」

「え?そりゃさ、で~っかい車だよ」

「100mっていうと、地球人との比率なら車は400mになるぞ?その車って、どんな燃料で走るんだ?」

「いやいや、宇宙人だよ?すんごいハイテクノロジーで、そう!空飛ぶ車とか、ユーフォーみたいな?」

「いやいやいや、宇宙人だからっていきなりハイテクなわけないでしょ?地球人と同じような文明だとしたら、最初は火を発見して、それで煮炊きしたものを食べるようになって、そして長い年月を掛けて蒸気機関を作るんじゃん」

「それはさ、あれだよ。星によって元素が違っててさ、火なんかいらないかもしれないじゃん」

「ふぅ~ん、元素ねぇ、じゃ、その星の元素って地球と全然違うんだな?」

「そうそう!だって、宇宙だぜ!!」

「うん、その宇宙ってさ、どこまで行っても同じもので出来てるんだぜ?」

「へ?」

「そうなの!宇宙ってさ、ビッグバンで出来たじゃん、そんときできた元素ってほとんど水素だったんだって」

「水素って、エッチツーオーのエッチ」

「そうだけど、変な言い方しないの!そのエッチがさ、最初の星を作って、それが爆発するときにいろんな元素が出来て、それを宇宙にまき散らして、それが集まってまた星になって、だから地球には酸素だの鉄だの金だのっていう元素があるんだ」

「ということは、最初が水素だけで、おんなじ仕組みで元素ができるから、全宇宙同じってこと?」

「そのとおり!とするとね、身長100mの宇宙人が乗る車も、鉄で出来てるって事になる。これいったいどれだけ重いの?それにさ、ガソリンタンクなんかも、タイヤもそうだ。そんな重いの、作れる?」

「だ、だからハイテクノロジーで」

「ん~、だからさ、文明の始まりを考えれば、最初に火を起こすとこからはじまるんだから、100mの宇宙人ならものすごい火力が必要だろうし、材料の重量もすごいことになる。それでもさ、物が燃えて得られるエネルギーって、地球と同じなんだよ?」

「だねぇ、だねぇ」

「それに、そんな宇宙人の体重を支える骨も、鉄みたいな金属じゃないと持たないんじゃない?」

「くぅ~参った!! でっかい宇宙人いない!!せいぜい地球人の倍くらいだな!」

「だよねぇ、じゃさ、逆にちっちゃいのはどうだ?」

「ちっちゃいのはさ、それこそ蟻くらいのがいてもいいんじゃね?うじゃうじゃとさ」

「うぇ~、蟻くらいの宇宙人うじゃうじゃ、ちょっとやだなぁ」

「だって、頭が良ければいいんでしょ?さっきのでっかいのと違って、ちっちゃいのならどんだけちっちゃくってもいいような~」

「そうだなぁ、そりゃでっかいのと違って、ちっちゃい生物はたくさんいるからねぇ、でもさ、やっぱりさっきと同じように考えると~」

「なになに」

「やっぱりさ、文明の始まりを考えるんだよ。いきなりハイテクはないからね」

「ちっちゃいのなら、使うエネルギーもちっちゃいからいいじゃん?」

「そう?例えば、身長1cmの宇宙人がいて、火を起こすとする」

「ふんふん」

「その宇宙人が手に持ってるのは、小枝か?枯れ草か?それを燃やして、何秒燃える?」

「えっと、3秒とか?」

「それで何ができるのさ」

「はぁ、あちち!ってビックリするくらいかなぁ」

「だろ? な~んも出来ない。もしその火を大きくして何かしようとすると、自分の何千倍も、何万倍も大きな建物を作らなきゃなんない。人類だってピラミッドを作ったんだから不可能とも言い切れないけど、1cmの宇宙人が持てる石って、どれくらいの大きさ?」

「こ、小石かな?それもミリ単位の」

「でしょ?それとだ、そういう問題をクリアしたとして、その宇宙人の乗る車って、どれくらいの大きさ?」

「は~ん、もう分かったぞ!5cmくらいの車だとしたら、ガソリンタンクにどれくらいガソリンが入るんだ?って話でしょ?」

「そうそう!そ~んなちっちゃいタンクで、どれだけ燃えるのさってこと」

「はい!分かりました!!ちっちゃいのも無理であります先生!!」

「そうだね、宇宙人の大きさについて考えてきましたが、結論としては、宇宙人は地球人とあんまり変わらない大きさ、その理由は、地球人くらいが宇宙の元素を利用するのにちょうど良いから、ですね」

「先生、こ、これは大発見なのでは」

「そうだねぇ、いつ学会に発表しようかねぇ」

「ノーベル賞も夢ではないかと!!」

「夢ではないかと!!」


「夢では!?」


「夢??」


「ゆ・・め」



「お~い、いいかげん起きろ~」


 国語教師の声がして、僕の頭の上で教科書がポンポンと弾んだ。


 あれ?僕は、寝てたのか。


 なにかすごいことを思いついたと思ったんだけど。


 忘れちゃった。





宇宙人のサイズ   了

大盛こもりの短編集。

がんばって毎日1本アップしたいですが、難しいですね。

でも、お気に召す作品が1本でもあれば、うれしいです。

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