限界
――さらに数ヶ月経った。
俺の人生での大切な範囲。
その範囲はせいぜい半径数メートルでしかない。
その円のなかに居る本当に大事な人たち。
せいぜい数人程度しかいないだろう。
それでもその数人たちとささやかな幸せを紡ぐ。
それさえもぶち壊すのか!!
俺のわずかな願望。あの日を境に2度と戻らないものになってしまった。
なにか悪いことしたか?この俺が!!
見た目も中身も普通のサラリーマンだ。
――俺の人生。
これからもこんなふうにしか生きられないのであれば、せめて俺が、この俺の手で終わらせてやる。それぐらいの自由は与えられていいはずだ。
できれば、こんなふうに終わらせたくなかった。高望みはしない。普通の人生を普通にまっとうしたかった。
でも……
――さよなら、俺の人生よ――
ビルの屋上で、俺は俺の人生を終わらせるべく、柵に手を掛ける。
周りを見渡す。人影は無い。
下を覗き込む。ここは13階だ。
間違いなく死ねる。
舞い上がるビル風が俺の顔を打つ。
こういう時は躊躇してはいけない。
ここで引き返したとて、またあの日々が口を開けて待っているだけではないか。
ふと、家族や理沙の顔がよぎる。
優しく微笑んでいる。
振り払うように一瞬、目を瞑ったあと、
えいや!!と柵を飛び越え、その勢いで前につんのめる。
あ!!!!
と思った瞬間、ものすごい勢いで俺は重力に引っ張られる。
咄嗟に目を瞑る。
その時、フッと意識が落ちた―――