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家族

理沙との不本意な別れから数ヶ月……

俺は自暴自棄になっていた。

すべてがどうでもよくなっていた。

かろうじて会社には出勤していたものの、

仕事のペースも徐々に落ちてきていた。

このままだと、やがて退職、引きこもりになる……。


こういう時、さすがはおふくろだ。

絶妙なタイミングで電話を寄こす。


「孝之、最近どうね?」

「どうって……相変わらず。元気にしとるよ。」

「ふぅん。引地のおばちゃんから芋をたくさんもらって食べきれんから送るよ。」

「うん……ありがとう。」


俺は懐かしいおふくろの声を聞いて、一瞬、

例の話をしようかと、言葉が出そうになった。

しかし、飲み込んだ。

おふくろは早くから脳溢血で倒れたおやじの介護を1人でしている。これ以上、要らぬ心配はかけられまい。


美奈にも……

美奈は俺の妹だ。

生意気なやつだが、今では家庭を持ち、看護師としてバリバリ働いている。


おふくろとの電話を切ったあと、いっそ故郷に帰り、顔だけ見せに行こうかと考えた。

しかし、それをすることは、否が応でもあの現象と向き合うことになる。

家族……それさえ否定してしまったら、俺の心の中の故郷はどうなってしまうんだ?

家族の笑顔、故郷の川のせせらぎ、田舎の人たちの素朴なイントネーション、田んぼの匂い……すべてが上書きされてしまう。

大切なおもいは、少しでも長くとっておきたい。


ひょっとすると、勘のいいおふくろのこと。

俺の声色を聞いて、なにか勘付き、東京に来るかもしれない。

いや、おやじを残してそれは無いだろう。


しかし、遅かれ早かれ、家族と対面しなければならなくなる日が来る。当たり前だ、家族なんだから。

――どうする。






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