どうしてこんなにも愛しい人の愛のカタチ
「ねえねえ聞いて聞いてすごいの!!!!!」
「なに朝っぱらから元気だなぁー」
「あのねスゴい夢見ちゃった!!!なんかドーナツに飛び込んで、世界を移動しなきゃいけないんだけどね、こう…こんな感じに、体が、ねぇ見てってば!!!こんな感じになってね、でねこう……ぐあーーって!!!!すごくない!!?」
「うんすごいねー」
「何それねぇヒドくない?なんでそんな冷たいの私の事キライになったの?私はこんなに好きなのに世界で一番好きなのになんでそんなに冷たくするの?ひどいよ。ひどすぎる。もういい私死んであげる。私の事嫌いなんでしょ、ウザいんでしょ、見たくもないんでしょ、だからそんな冷たい言い方するんでしょ?わかった死ぬ。シュウちゃんの為に私死ぬ。今までごめんねありがとう」
「シロ、」
「…………」
「………おいで?」
「…………」
「よしよし」
「うーー」
「泣かないの。だっこしててあげるから。」
「シュウちゃんゴメンね。私の事こんなに好きでいてくれてるのに私ひどいこと言ったね。でもね私シュウちゃんが好きなんだよ。大好きなんだよ。世界で一番大事なんだよ。だから不安になるんだよ。すごく好きだからこんなに不安になるんだよ?」
「うん」
「ごめんねシュウちゃんお願い捨てないでシュウちゃんに捨てられたら私死んじゃうお願い嫌わないで大好き」
ぎゅうっとしたら、シュウちゃんは私の頭を優しく撫でてくれた。ぎこちない手つき。女の頭を撫でなれていない証。私しか撫でないシュウちゃんの大きな手。愛しさがさらに膨れ上がってきて、シュウちゃんのTシャツに顔をピッタリくっつけた。愛しい人の匂い。このままシュウちゃんの匂いで肺がいっぱいになればいい。そしてその空気が全身を巡って、私の隅々までシュウちゃんの匂いで満ちればいい。ああ私は何て幸せなんだろう。こんなに幸せな他人はきっと存在しない。シュウちゃんくらいだ。シュウちゃんも今、私と同じくらい幸せなはずだ。さらにぎゅうっと密着する。愛し合う二人の間には、空気すら割り込ませたくなどない。服も邪魔だ。皮膚も邪魔だ。私はこんなにもシュウちゃんの心と一緒くたになって、ぐちゃぐちゃに混ざり合ってひとつの物体になりたくて堪らないのに、身体は時に愛し合うことを邪魔する。でも体がないとシュウちゃんに撫でてもらえないし、私もシュウちゃんを気持ちよくしてあげられないから、まあいっか。
「ねえシュウちゃん」
「ん?」
「大好き」
「うん」
「私が死んだらどうする?」
「食べてあげるよ」
「残さず?」
「もちろん」
ああああシュウちゃん大好きホントに大好き。なんてこんなにも愛しい男。私が死んで、シュウちゃんが私を食べるところを想像した。まだ温かい私の血でシュウちゃんが染まる。ううん。シュウちゃんは血の一滴も残したりしない。キレイに全部食べてくれる。食べおえたシュウちゃんはそれから泣くだろうか。私はシュウちゃんになる。それではじめて、私たちはひとつになれる。愛し合った私たちが、ひとつになれる瞬間。
「シュウちゃん、」
私の心臓が血液を生産する。シュウちゃんの心臓はシュウちゃんの血液を生産する。私もいつかシュウちゃんに生産されると思ったら、涙が出て止まらない。シュウちゃんはそれを舐めながら優しい手で頭を撫でる。愛する人が私の涙を舐めながら、泣き顔かわいいと呟いた。私は世界一幸せな女だ。死んでも幸せなんて、私はどうしよう。シュウちゃんの心臓がさらに勢いよく血液を排出した。その振動が私にまで響いて、さらに涙を止められない。
愛の形は価値観と同じ。一人一人みんな違う。
から、自分と似た人と巡り会えたらなんて幸せ。満たされる。
自分が望むものとは別のカタチで与えられる愛は重かったり、不快だったり、理解できなかったり。
でもどんなカタチだろうと、
世界がそれを歪だと眉をしかめても、
互いが望み合っているのならこの上ないしあわせ。
シュウちゃんとシロは、だからしあわせ。