流星群1
仕事終わり、いつも通り風呂に入りながらスマホを見る行儀の悪い俺だが、この時のこの行動は当たりだった。
後にも先にもきっかけというのを探すならここしかないと思う。
ふと目に付いた流星群という文字。
悲しいかな、こういう天体ショーにおいて俺はいつも不遇だった。
天候が曇りだったり、雨だったり。
皆既月食や、日食は仕事の時間と被ったりとなかなか縁がなかったが、今回のは見れそうだった。
そうと決まればサッサと風呂を上がって夜空を見てみようと思った。
いい歳して実家暮らしだが、今日は親はライブへ行っていて帰りは遅い。だからなんだという感じではある。
濡れた髪も適当に、ビール片手に寒空の下窓を開けて空を辛抱強く見ていた。
ぼーっとただ空を見ていたら、誰が近づいてきた。
「何やってるの?」
視線を声の主に合わせれば、社会人らしい女性だった。
「天体観測。空見ながら帰ればみれるかもな」
普段なら怪しむだろうに、酒が入っていたのか、やたらとフランクに話していた。
「ふーん、ロマンチストね。ねぇ、それビール?」
「ん?そうだけど」
「ねね、1口ちょーだい」
そう言って、何も答えてないまま俺からビールをかっさらってゴクゴク飲みやがった。
普段なら多分怒るだろう。だが、今日は気分が良かった。
「ふっ、いつか返せよ」
そう言って彼女に手を振って見送った。
真っ暗な夜空に一筋の線が走った。