賢者デビュー
「翠の賢者様・蒼の賢者様、並びに・・・・黒の御子様をお連れ致しました。」
重ね重ねすいません。どこの誰ともわからないから、言い様がないよね。
王城に行く前に、ロベリアから注意された事が一つ。
『いいですか夜空。私達賢者は、相手が王であれ、首を垂れる必要はありません。忘れないように』
むむ、日本人気質で、つい頭下げちゃいそうになる。
これは、気を付けないと。
賢者は国に仕えているのではなく、あくまでも客分。
媚びる様な事はあってはならないのだそうだ。
王様は、想像と違って若かった。
プラチナブロンドの髪に碧眼、ザ王族って感じの色。
40代くらいかな。
ひざをつくことも、首を垂れる事もなく王の前で対峙する。
僕はといえば、安定のラダさんの腕抱っこのままだ。
さすがにダメな気がするけど、いいのかねこれ。
「久しいな、ロベリア殿。祝いの席の前に時間を作れとは何事だと思っていたが、これはまた頭の痛い・・それは何処で拾ってきたのだ。龍種?いや人の子か?損なわれていない双黒など、戦が起きてもおかしく無いぞ。今日は末の姫の祝いの日だというのに、厄介事を持ってきおって。」
残念ですがどっちも違います、それどころかこの世界の生き物ですらありません。
強いて言えば、獣人になるのだろうけど。
「それ・・?」あ、ロベリア眉間に皺が・・。
うーん、王様、言葉を選ばないダメな人だなぁ、こんな感じいつも地雷を踏んで、周りを困らせてるとみた。
しかも、ロベリアの機嫌が急降下しているのが分かってない。
空気も読めないタイプか。
こんな王様じゃ、宰相さん以下臣下の皆さんも、苦労してるだろうね、目に浮かぶ大変だ。
ロベリアを中心に、部屋の気温がどんどん下がっているのは気の所為じゃないよね、寒い。
「ほう、戦か?起こすがいい。国が滅びるだけだ。我ら二人の龍種の庇護に置かれる愛し子と知って尚、手をだす馬鹿はおるまいて。」
ロベリアがふんと鼻で笑った。部屋の寒さは下がるいっぽうだし、首の後ろもチリチリと痛くなってきた。
鍛えてる騎士さん達が平気なのはわかるけど、王様と宰相さんも大丈夫なのは、ちょっと意外だ。
控えてる人達は、今にも倒れそうな位顔色悪くなっているし、これはちょっとまずいかな。
『ロベリア、黒いのが駄々洩れだから、やめてあげて。』
つんと服の裾をつまんで、少し引っ張れば、あっと言う間に威圧は霧散した。
「・・この子の名は夜空と言う。この度、私の養子に迎える事になった。ここにいる蒼の賢者ラダもこの子の後見に付く。併せて、『黒』の名乗りをさせる運びとなった。出自については、一切秘匿とする。その旨、触れを公布してもらう。」
僕が賢者を名乗るなんて、おこがましいとは思うけどね。
魔力量の多さと異世界の特異な知識。
試したら、古代語だろうが何だろうが読み解ける事も判明して(異世界チート様様だ)充分条件を満たしていると二人が判断したんだって。
とはいえ、いくら魔力のある双黒でも、見た目はひ弱な子供(涙)
僕自身が『黒』を名乗る事で、有象無象に牽制をかけ、いらぬトラブルの抑止力になる。
そう諭された。




