混ぜるな危険
しゅるりと人型に戻ったラダさんは、既に着衣を身に着けていた。
え?何そのイリュージョン?
は?空間魔法に衣装をそのまま着れる様にセットしてる?
えー、そんな事出来るなら教えてよー。僕いつも、もそもそ着替えてた。
コツがいるから、かなり練習が必要?
するする練習。
でも今は無理なので、ロベリアの大きなローブに中で人型に戻って着替え中、よいしょっと。
「ぷはぁ。ありがとうロベリア。」
「・・夜空。無事で良かった。」
「ほんに心配したぞい。」
ローブから這い出してくると、ロベリアに改めて抱きしめられた。そしていつもの様に、そのまた外からラダさんに包まれる。
その二人の隙間から、ガッツで潜り込もうとする4匹の精霊・・ふふっ。
ぎゅうぎゅう詰めで苦しいのに、心はポカポカだ。
「『始祖様』ご帰還寿ぎ申奉り上げます。我等一族、この時をを一日千秋の思いで待ち望んでおりました。」
シーアの王様が団子状態の僕らに向かった膝をついて首を垂れた。
あ、王様の存在すっかり忘れてました、ごめんなさい。
ケネスさんも王様の後ろで拝している。
「・・王様「私の事は、どうぞルルイエとお呼び下さい。」」
「・・・・。」
笑顔なのに無言の圧力。
こんな綺麗な笑顔なのにぃー。
どうしても呼び捨てにしないといけないみたい。
「・・ルルイエは・・大丈夫?怪我とかしてませんか?」
「はい、始祖様。」
煤だらけでも王様は凛としてるなぁ。
洗浄魔法かけてあげよう。
「・・恐れ入ります。『翠』及び『蒼』の賢者、高位精霊の皆様にも多大なるご心痛をおかけいたしました。我がシーアの王族が、龍の養い子ましては『始祖様』を害するなど、お詫びのしようもございません。」
「首謀者はどれです?」
ロベリアは、ラダさんに僕を子供抱きに預け、王の前に静かに立った。
「あぁ、まだ生きてはいる様です。それそこに。・・此度の件、遺恨無き様根絶やしに致しますので、しばしの猶予を頂きたく・・。」
「ふむ、良いでしょう。・・ただし私も狩りに加わります。」
「御意。」
雷撃で黒々になって呻く大公を指さし、2人でふふふと綺麗に笑っている。
うわぁ、意気投合しちゃった。
『劇物注意』『取扱注意』『混ぜるな危険』『触らぬ神に祟りなし』・・・。
遠い目になる僕にラダさんが予備のイヤーカフを付けたくれた。
『・・私の姿は恐ろしくなかった?』
大型犬の耳がしゅんと垂れてる幻が見えるよ・・。
「最初はびっくりしたけど。ドラゴンのラダさんカッコ良かった!今度乗せてもらっていい?」
『今度、空の散歩に一緒に行こうか。』
大きな手で頭を撫でられ、ほんわかしてる目の端に映るのは、どうみても悪巧みしてる様にしか見えない、ロベリアとルルイエ、そこにケネスさんもにこやかに笑って参加してる。
・・黒いオーラ湧いてるけど・・。
いやあの3人止めないと、ホント不味くない?
「ルルイエ・・あの・・シーアはずっと僕の事捜してくれてたんだよね。永い事待たせてごめんね。それと・・黒喰いを封じるお役目お疲れ様でした。浄化するので見届けて下さい。」
僕なんかが偉そうに言うのも、どうかと思うけど・・。
裸足の僕を下ろすのを渋るラダさんをどうにか説得し、黒喰いの澱の前に立つ。
「田中さん、鈴木さん、佐藤さん、後藤さん力貸してね。」
「「「「もちろん。」」」」
炎の精霊 後藤さんの力 ― 青い炎
佐藤さんの頭の上で、小さな深紅の翼を揮えば、ごうと音をたてて、霊廟内の黒喰いの欠片一つ残らず炎があがり、室内はまるで海の中の様に青一色に染まる。
黒喰いになりかけたあの人も燃えている・・人として葬れないけどごめんね。
・・あれ?この澱・・地中に根張ってない?
何故かボンヤリとした映像で、黒喰いが地中に潜り込みジワリと、奥底に逃げ様としているのが見えた。
土の精霊 田中さんの力 ― 緑の手
田中さんが、地面に金色の手をつくと、小さな苗木が黒喰いから生えた。
苗木は、凄まじい勢いで巨木に成長し、逃げる黒喰いを根っこで雁字搦めにしていく。
巨木は桜。
黒喰いの力を吸い上げ、絢爛豪華に咲き誇る。
風の精霊 鈴木さんの力 ― 清めの風
鈴木さんが銀色の小さな体を楽し気にくるりと回れば、優しい風が桜の花びらを高く舞い散らせる。
淡い色の花びら一枚一枚に清めの加護が与えられ、穢れたこの場を清浄にしていく。
「なんと美しい・。」
この場にいあわせた者は、その幽玄さに
心を奪われた。




