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人狼ちゃんのあべこべ転移奇譚  作者: 後ろ向きミーさん
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お父さんができました

ここは、20の領地からなる国で、名前はクリアゼ。

その内の一つ、周囲の山々を含め、許可の無い者の侵入はできない不可侵の森の中、ロベリアはたった一人きりで住んでいる。


「馬鹿の依頼がない限りは、のんびりと薬草を作り、月に数回街や村に出向いて、薬師として薬を卸したりして生活をしているね。この山々は私の薬草園みたいなものだから、荒らされない様、人が立ち入り出来ない様にしてあります。夜空もそのうち採集に一緒に行きましょう。

街の方は、安心して同行できる環境を整えてからだね。もう少し待っていなさい。」


生活用品の買い出しには、国中の色んな場所に転移陣を用意してあるので、不便ないようだ。

実際、僕の身の周りの物も、翌日には大量に用意された。

甘やかしすぎです、ロベリア。

僕が生活に慣れたら、いろんな所に同行させてもらえるらしい、異世界の街、楽しみだな。


山で気ままに狩りをしたり、時々ロベリアに向こうの甘味を作って大喜びされたりしながら、少しづつこちらの世界を学ぶ日々。

向こうとこちらの常識や世界観の違いを話あうのも楽しい。

明らかに知らない言語に筈なのに、こちらの世界で、会話、読み書きに困る事はなかったのには助かった。

これがチート・・ってやつかな。

独りきりになった時、思わず言ってしまった。


「・・・ステータスオープン・・。」


結果、何も出ませんでした、本気で恥ずかしかったです・・。


剣と、魔法、精霊に魔獣、中世の様な世界観。

ここで暮らす種族は大まかに3種。


人族。

寿命は長寿の人で130才、基本的な成人男性の身長が平均は2m前

後、僕のいた人の世よりはるかに大きい体型だ。

これじゃあ、いよいよ子ども扱いされても仕方ないかも、と自分を慰める。


獣人族。

人族とかわらない体形で、なおかつ獣の身体能力を合わせ持っている人達。

人族との婚姻も多く、純血の獣人は少なくなっている。

俗に言う獣耳、尻尾は、必ずしもある訳ではなく、ましてや、僕の様に完全獣化など出来る人はいない。

そうか、いないのか・・・。


龍種族。

ロベリア曰く、絶滅危惧種。

龍種の上位種には、まれに龍化できる者が現れる。

巨大な魔力と長寿が特徴で、子が出来る事が極端に難しい。

其の為か、子供や小さい物に対して庇護欲が強い。

かわいい物にめっぽう弱いって事・・・んんっ?

それって・・・とロベリアを見つめると、苦笑いをされた。


「そう、私は龍種だよ。この地に存在する賢者と呼ばれる者は、だいたい龍種だね。ただただ長く生きているのだけで、身に着けた知識なのに、賢者と呼ばれるのには、今だに慣れないよ。」


「ロベリアは、他の賢者にお知り合いがいるのですか?」


「いるよ。親友の一人が『蒼』の賢者とよばれているね。ひさしく会っていないけど・・。夜空も紹介した事だし、便りをだしてみようかな。以前のねぐらから移動していなければいいけど。ふふふっ、彼も夜空に会ったら喜ぶだろうね。」


ロベリアは薬の調合をする傍ら、僕の勉強をみてくれている。


「質問があったら、どうぞ。」


「・・僕に会った時に驚いていましたが、この世界には、黒に特別な意味はありますか?」


「黒持ちは巨大な魔力を有する。が、その強すぎる魔力の為、体がもたないとされている。赤子の内に流れたり、生まれる事が出来たとしても、体に欠損があったり、魔力によって、なにかしら体を蝕まれ生まれてくるので幼児の内に亡くなる。生きて成長できた子を見たことはあるが、その子は髪の一房が黒だったね。魔導士になって、どこかの国のお抱えになったはずだ。」


「じゃあ、僕みたいな黒って・・・。」


「いないねー。」


「そうですか。僕の場合、生活魔法が使える程度なんですが。」


そう、僕はあっさりと生活魔法が使えたのだ。

洗浄魔法と収納魔法が使えた時は感動した。

地味な魔法でも、狩りの時には大変重宝している。

ロベリアの山は、雪深くなると聞いてから、少しづつ狩り貯めているところ。

割と楽に狩りやすい魔獣に、豚や牛っぽい味がいるのでホクホクだ。


「黒は、この世界の理だよ。君の魔力は強い、私に引けを取らないと思う。第一、生活魔法といっても、夜空は無詠唱で使っているじゃないか。息をする様に自然に使いこなせている自体、あり得ないからね。」


あれ?そうだったっけ?


「この間も、治癒魔法で自分の擦り傷を完治させたのを知っているよ。人化もしかり、無自覚で、他にも色々規格外の事やらかしてるから。

お願いだから、どこかで攻撃魔法なんて試したりしない様に。」


・・試そうと思ってたのに、釘差されちゃったよ。

いや、魔法が使えるなら考えるでしょう、やっぱり青少年のロマンだし。


ロベリアは作業の手をとめて僕の対面の椅子に座った。


「・・そこでだ、夜空。私の養子にならないかい?まだ君の存在は知られていないし、これからの安全を図る為には良い方法だと思うのだが。賢者の身内、ましてや庇護欲の塊の龍種の愛し子に、ちょっかいをかけるなんて、自殺行為以外何物でもないからね。ふふっ。」


ロベリア・・悪い顔になってますよ・・。


「養子・・ロベリアと僕が家族・・。ありがとう、お父さん?」


あ、ロベリアが悶絶してる・・。


「夜空っ、も、もう一度。」


「えーと。お父さん。」


「・・もう死んでもいいですね。」


「いや!生きて!」


お父さん呼びは破壊力がありすぎるの封印しましょう、とロベリアに真面目な顔で諭された。


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