表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人狼ちゃんのあべこべ転移奇譚  作者: 後ろ向きミーさん
1/47

さよなら人の世

今の世の中、人外には生きにくい。


自己発信ならともかく、まったく知らない他人から、思いも知らない所で個人情報を開示されていた、なんて事も珍しくないしね。

目立たないように、気付かれないように、気を配って生活する日々。

人のふりをして、人の群れの中で生きている事に、正直疲れちゃった。

だから ー15才の夏― 人の世から消える事にした。


山の中でたった一人裸で見つかった僕は、児童福祉施設と言う所に送られた。

一言も話せない僕は、ここで仮の名前を与えられる。

衣食住には困らなかった。

人としての必要な教育も受けさせてもらえたし。

学校と施設の往復の狭い世界。

唯一楽しい事といったら、本を読む事だ。

知らない場所、知らない知識、空想の物語、本の向こうには広い世界があった。

図書館の静かな空間も大好きだった。

異世界転だ、転移だ、最近の流行りの物語の中は人外だらけなのに、現実は厳しいね。

僕以外の人外は、いったい何処にいるのだろう。



悔やんでいる事は、しっかり体が作れなかった事だ。

今の僕の身長は150センチ足らず、人の世でも小さい。

その原因は分かっている。

単に、肉が足りなかったからだ。

施設で少量のおこずかいはもらっていたが、子供がどうやって大量の生肉が用意できよう。

そりゃ、ぶっちゃければ人も肉だが、さすがに寝食を共にした人をそんな目で見る事も出来ず、今に至ってしまった。

体の成長が止まり、そしてこの先老いる事もないと本能的にわかった事が、僕の気持ちに踏ん切りをつけた。


小さなバック一つ抱えて、手持ちのお金で行ける所まで移動した。

途中、心配されてだろう、いろんな人から、何度も声をかけられる。

夏休みを利用して遠い親族の所に帰郷するのだと答えると、一応は納得してくれたようだ。

僕自身はわからないのだか、どうやら僕の容姿は庇護欲をそそられる見た目らしい、これも人の世で生きやすくする為の擬態の様なものなのだろうか?


人の分け入らない山奥まで来た僕は、小さな穴を掘って、持ってきた荷物と、身に着けた服を全て脱いで埋めた。


「さようなら?ただいま・・かな?」


これで、声を出すのも最後だろう。

ゴキ。ゴキ。メリ。ゴキリ。

不穏なくらい骨の軋む音がする。

大丈夫、戻る感覚は覚えている。

あぁ、小さい僕でも戻ればそれなりのサイズになれた様だ。

これなら狩りも出来るだろう。

ひらりと尻尾を揺らし、僕は久しぶりに全力で駆けだした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ