第2章 30 3度目のタイムトラベル
翌朝9時―
「教授、これが改良された『磁場発生装置』ですか?」
乱雑な机の上に置かれた腕時計型の『磁場発生装置』を手に取り、教授に尋ねた。
「ああ、そうだ。ふあ〜あ〜…改良に時間がかかってしまった…結局昨夜は徹夜をしてしまったよ…」
教授は眠そうに会話の合間に欠伸をしている。
「しかし教授…こういう言い方をしては何ですが…見た目は全く変わっていないように見えますが、どこがどう変わったのですか?」
磁場発生装置を見てみるも、何も特に変化を感じられない。
「確かに外見は全く変わっていないが、性能は抜群にアップしているぞ。ほら、このアイコンを見てみろ。これはお前が過去に戻った時間軸と同じ座標に戻れるように設定出来るのだ。だから一度過去に戻った後、その時間の数日後もしくは、数週間後に戻れるように設定出来るようにしたのだ」
「すごいじゃないですかっ!それでは例えば3月30日の過去に戻ったとしますよね?その後今の世界に帰り、再度時が経過した4月10日に戻ることが出来るというわけですねっ?!」
「ああ、恐らく理論上はな」
「え…?」
教授の言葉に一抹の不安を感じた。
「教授…何ですか?その理論上はな…というのは?」
「ああ、実際に使用はしていないからな。テストもしていないからはっきりは言い切れん」
「そ、そんな…」
本当に大丈夫だろうか?
「心配するなって!大丈夫っ!私は天才だからな!」
ハッハッハッと笑う教授。
「全く…。他人事だと思って…」
「何だ?嫌なら使わなくてもいいぞ?」
「いえ!使いますっ!いえ、お願いですっ!使わせて下さいっ!」
慌てて頭を下げた。
「よし、それではお前にこの『磁場発生装置』を預けよう。これは充電器だ。バッテリー容量には気をつけるんだぞ?」
机の前に置かれた充電器を受け取ると教授に尋ねた。
「教授はこれから講義ですよね?」
「ああ、そうだ。もう行くのか?」
「はい、行きます」
椅子の上に置いたリュックを背負うと、返事をした。
「上野…」
「はい」
「健闘を祈る」
「…教授…はいっ!では行ってきますっ!」
力強く頷くと、俺は研究室を後にした―。
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10時30―
『時巡神社』の鳥居の前に俺は立っていた。
「…よし、行くか。15年前の3月30日へ…」
磁場発生装置をセットし、アイコンをタップする。
するとたちまち霧がたちこみはじめ、周囲の景色が霞んでいく。
「彩花…それに15年前の俺…待ってろよ…!」
そして俺は鳥居をくぐり抜けた。
今度の世界では必ず彩花と恋人同士になり、彼女を守る為に―。