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第2章 6 初めての時巡り

「すみません…」


薄暗い店内…。人の気配も感じない店内に恐る恐る足を踏み入れながら声を掛けた。

すると…。


「はい、何でしょうか?」


店の奥の引き戸の奥から1人の男性が現れた。外見は40代位に見えた。だが、何処かで見たことがある気もする。…一体、どこで…?


「すみません…この辺りにコンビニはありませんか?」


何かを思い出せそうな気持ちになりながら、店員に尋ねた。


「コンビニ…ですか?」


「ええ、『エブリィマート』という名前のコンビニですが…」


「いえ、無いですねぇ…でもいずれはこの酒屋をコンビニにしようとは思っていますがね」


男性店主の言葉に何故か俺は反応してしまった。


いずれ、酒屋…?


驚いて、顔を上げるとその顔には見覚えがある。そしてその男性が首から店員証をぶら下げていることに気付いた。その名前は『八木』と書いてある。


『八木』…?八木だって?!それは…今のコンビニのオーナーの名前だ!

よくよく見ると、あのオーナと同じ顔つきだ。ただ、今目の前に立っている人物のほうがシワも白髪もなく、ずっと若い。


「ま、まさか…」


思わずよろめきそうになった。


「どうしたんですか?顔色が真っ青ですよ?」


オーナー…いや、八木さんは心配そうに声を掛けてきた。


「い、いえ…何でも…ありません。と、所で…今は何年の何月何日でしたっけ?」


「え…?今は…」


八木さんは戸惑いながらも答えてくれた―。




****


「どうもありがとうございました」


八木さんにお礼を述べると、ふらつく足取りで酒屋を出た。


「そんな…馬鹿な…」


驚くべきことに、ここは今俺がいた世界の15年前の時代だったのだ。


「何故だ…?」


いや、何となく見当はついている。きっと原因はあの『時巡神社』だ。

俺があの神社で過去に戻れれば…と強く願ったのが原因かも知れない。


だが…。


「駄目だ…10年前じゃ…俺が戻りたい過去は10年前なんかじゃない。8年前なんだ…この世界では…彩花を救えない…」


この時の俺は、元の世界に戻れるかなんて考えてもいなかった。どうすれば8年前のあの6月9日の事件発生前に時を戻れるのか…それしか念頭に無かったのだった―。



「あ…」


行き場が無かった俺は気づけば神社まで戻っていた。まだこの辺り一体には深い霧が立ち込めている。


「参ったな…よくよく考えてみれば…俺はどうやって元の時代に戻ればいいんだ…?ん…?待てよ…?」


そう言えば、鳥居をくぐった時に10年前に来ることが出来た。逆の方向から鳥居をくぐれば元の時代に戻れるのではないだろうか…?


それは俺の仮説だった。けれど、何故か絶対的な自信があった。


「よし、もう一度…元の時代に戻れるか…念じながらくぐってみるか…。」


一縷の望みを掛けて、俺は鳥居をくぐり抜けた時に…視界が歪み、一瞬めまいを起こした。


「う…」


目を閉じ、頭を押さえながらめまいが収まるのをじっと待った。

やがてめまいが収まり、目を開けるとあれ程立ち込めていた霧が綺麗になくなっていた。


「霧が…消えている…」


俺は今度は鳥居をくぐり抜けずに、脇道を通って林の中を走り抜けた。


「え…?!」


すると、そこには乗ってきた自転車が元の場所に置かれていた。


そう、俺は…自分の生きていた時代に戻ることが出来たのだ―。




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