第1章 57 恋人同士の時間
翌朝―
私と拓也さんは目覚めのコーヒを隣同士で一緒に飲んでいた。
「フフフ…」
夢にまで見た…目覚めのコーヒー。念願叶って思わず笑みが浮かんでしまう。
「どうしたんだ?」
そんな私を不思議そうに見る拓也さん。
「ううん、実は私ね…。ずっと夢だったんだ…」
「夢って?何が?」
「好きな人と一緒に朝を迎えた時に、こうして2人でコーヒーを飲むのが…」
自分で随分恥ずかしいことを言ってる気持ちになってしまい、思わず顔が赤くなる。
「彩花…」
拓也さんはポカンとした顔で私を見て…肩を抱き寄せてきた
「俺も夢みたいに幸せだよ。彩花と恋人同士になれたからな」
「拓也さん…」
そうして私達はキスをした―。
**
「今朝は俺が作るから、彩花は何もしないで座っていろよ?」
台所に立った拓也さんが私に言った。
「拓也さん…。料理出来るの?」
ベッドによりかかりながら尋ねた。
「当然だろう?任せとけって。今朝はパンでいいかな?冷凍庫にパンが入っているの見つけたんだ」
「うん。いいよ。楽しみにしてるね?」
「ああ、任せとけって」
そして拓也さんは鼻歌を歌いながらガス代に火をつけた―。
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「はい、おまちどうさん」
拓也さんが出来上がった料理をテーブルに運んできた。お皿の上にはサラダにベーコンエッグ、そしてボイルソーセージ。そして別の皿にはチーズトーストが乗っている。
「ありがとう、美味しそうだね」
「だろう?それじゃ食べようか?」
「うん」
そして私達は向かい合わせで仲良く朝食を食べた―。
「美味しかった〜。それじゃ片付けは私がするよ」
「いいから、彩花は座ってろって。片付けも俺がするから出かける準備しなよ」
「え…?でも…いいの?」
拓也さんを見上げる。
「ああ、俺が彩花の為にやってあげたいのさ」
私の為…。
その言葉に再び赤くなってしまう。
「ハハハ…。本当に彩花はすぐに赤くなって…可愛いな」
拓也さんは私の頭を撫でると言った。
「さ、準備してなよ」
「うん」
そして拓也さんは食器洗い、私は出かける準備を始めた―。
****
それから数時間後―
「あ〜…素敵な映画だったな〜…」
映画館を出ると、思わず言葉に出てしまった。
拓也さんと2人で観た恋愛映画はとても素晴らしかった。
「最後の方はちょっと泣いてたよな?」
手を繋いで歩いていた拓也さんがからかうように言う。
「や、やだ。観てたの?」
「うん、少しな。でも…俺も感動したよ。一緒に観た相手が彩花だったから尚更かな?」
拓也さんは私が欲しい言葉をくれる。
「あ、ありがとう…でも…最後は悲しい終わりだったね。折角恋人同士になれたのに…彼女が病気で死んでしまうなんて…」
「そうだな…でも、短い間だけでも恋人同士になれたんだから…悔いはなかったんじゃないかな…」
拓也さんは寂しげに言う。
「拓也さん…?」
すると繋いだ手に力が込められた。
「よし、次は本屋に行って図鑑を買うか?」
「そうだね」
そして私達は本屋さんへ向かった―。




