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第1章 36 拓也さんの自信

 次の瞬間―


ガチャッ!


勢いよく扉が開かれ、たっくんが部屋の中に現れた。


「たっくん!」


思わず私は立ち上がった。


「お姉ちゃん!お兄ちゃんっ!」


たっくんが駆け寄ってきた。


「たっくん!」


両手を広げると、たっくんが腕の中に飛び込んできた


「嬉しい…来てくれたんだね?」


「当然だよ…!」


私は強くたっくんを抱きしめた―。



****


「たっくん、いつまでここで暮らすのか…聞いたの?」


隣に座るたっくんに尋ねた。拓也さんは私の向かい側に座っている。


「それが…良く分からないんだ…。お父さん…捕まっちゃったんだけど…もう一緒に暮らすことは無いって警察の人に言われたから…」


「そうなんだ…」


そんな…それじゃ、この先ずっとたっくんは高校を卒業するまでは…施設で育つことになるの…?だけど…。


「た、拓也さん…!」


私は救いを求めるように拓也さんを見つめた。もし…もし、私と拓也さんが…書類上だけでも結婚して夫婦になれば…たっくんを養子として引き取れるかもしれない…!



すると拓也さんが言った。


「卓也…待てるか?」


「え?待てるって…何を?」


「うん…もしかすると、誰かが卓也を自分の子供として引き取りたいって言ってくるかもしれない…それまで待てるか?」


拓也さんはじっとたっくんの目を見つめている。


「う、うん…僕…待つよ。でも、そんな人現れてくれるのかな…?」


たっくんが不安そうな顔つきになる。


「だ、大丈夫っ!絶対…そういう人が現れるからっ!」


たっくんを安心させる為、私は力強く言った。うん…もし、もし…拓也さんから結婚の返事を断られたら…その時はまた、別の方法を探してみよう。私は絶対にたっくんを諦めたりしないんだから…。



すると不意に拓也さんが話題を変えてきた。


「卓也、まだ先になるけどさ…6月9日は誕生日だろう?」


「うん、そうだよ」


「その日、3人で何処か…そうだな、遊園地にでも遊びに行かないか?丁度日曜日だし。どうだ?卓也。行きたいか?」


「えっ?!本当っ?!行くっ!僕…行きたいっ!」


たっくんの目が輝く。


「彩花もいいだろう?」


不意に拓也さんが私に尋ねてきた。


「う、うん。私は大丈夫だけど…でも、遊園地って屋外だよね?6月ってもう梅雨に入るし…雨、大丈夫かなぁ?」


すると拓也さんが笑いながら言った。


「大丈夫だって」


「え?何が大丈夫なの?」


「6月9日は…きっと晴れるから」


そして拓也さんは笑みを浮かべる。何処か寂しげな笑みを…。


「本当に?本当に晴れるの?」


たっくんが拓也さんに尋ねた。


「ああ、俺の予言は絶対だからな」


拓也さんのその言葉は…妙に自信有りげだった―。

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