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第1章 20 彼の予言?

 その日の夜、拓也さんはたっくんの住むアパートに泊まり…言葉通りたっくんの父親は帰って来なかった。


 翌朝2人は7時に私の部屋にやって来て、皆で私の手作り朝ごはんを食べた。

手作り朝ごはんと言っても、ご飯に豆腐と若芽の味噌汁、納豆に目玉焼きにキュウリのお新香だけの質素な食事だったけれども2人とも美味しいと言って喜んで食べてくれた。

それが私にはとても嬉しかった。


 そしてその日から少しずつ私とたっくん、そして拓也さんのちょっと秘密で、不思議な交流が始まった―。


何故、不思議で秘密なのかと言うと…、それは私達の関係はたっくんの父親には絶対内緒だったからと言う事と、不思議な事は…。



****


 4月に入って初めての日曜日―。


 たっくんの父親は生活費を稼ぐ為、昨夜から家を留守にして泊りがけの土木工事現場に行っていた。そこで拓也さんは内緒でたっくんのアパートに泊まりに来ていたのだ。


そしてお決まりの様に3人で私の部屋で朝食を食べていた時の事だった。


「ねぇ、お兄ちゃんは何所に住んでるの?」


突然たっくんが拓也さんに尋ねて来た。


「え?お、俺?」


味噌汁を飲んでいた拓也さんは一瞬驚いたようにたっくんを見た。


「あ、それ私も知りたい。時々、全く音信不通意になってしまうと気があるけど一体どうなっているの?用事があって電話を掛けてみても繋がらなくて音声ガイダンスに繋がる時があるし、メッセージを送ってもエラーで返って来ることがあるし…」


「あ、ああ。俺は都内のアパートで暮らしているよ?後…どうも俺のスマホ、調子悪いみたいなんだよね。静電気体質だからかな?時々誤作動起こすんだよ」


「え?静電気体質で誤作動なんか起こすの?」


…どうにも怪しい。けれどそれを追求する事はしなかった。

何故なら私達3人の関係は近すぎず、遠すぎずの関係だったからだ。そもそも私は結局、たっくんにとっては赤の他人。所詮は父親から虐待を受けている可愛そうな少年のお隣に住む住人。父親不在の時はこっそり面倒を見ているだけの関係なのだ。


…私が彼を引き取ってあげる事が出来ればいいのに…。


そして拓也さんはたっくんの事を調査報告するように依頼を受けている興信所の人。だから詳しい事は何一つ教えてはくれない。私の中では少しは親しくなれたつもりでいるのに、いつも何処か一線を引かれている。


…そんな気がしていた。



「彩花、どうしたんだ?」


不意に拓也さんに声を掛けられて我に返った。


「ううん。何でもないよ。ほら、たっくん…明日から転校して最初の日でしょ?だから大丈夫かなって心配で…」


たっくんはご飯を食べる手を止めると俯いた。


「うん…僕も心配なんだ…」


すると拓也さんが笑いながら言った。


「大丈夫だって。すぐに友達が出来るさ。いいか?俺が予言してやろう。明日は出席番号順に席に着くことになる。そして、近くに座った3人の男子生徒達は昆虫の話をしている。卓也は昆虫が好きだろう?」


「うん、大好きだよ!」


「だから、自分からその3人にとっておきの昆虫の話をするんだ。たちま3人は興味を持って卓也の話にくぎ付けになる。そこでもう彼らとは友達だ」


妙に具体的な話をする拓也さん。

う~ん…。本当なのだろうか…?


俄かには信じられない話だけど、たっくんはその話を信じてしまった。


「本当?その話は本当なの?」


「ああ、勿論本当だ。俺は嘘をつかないぞ?だから何も心配するなよ」


拓也さんは笑みを浮かべてたっくんを見た―。



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