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第2章 128 限られた時間だからこそ

 目を開けると、この世界で使用できるスマホを開いた。


「…よし、間違いないな」


空を見上げると夕焼けの色に変わっている。


「彩花が仕事から戻ってくるのを待つか」


そして俺は自分のマンションへ足を向けた――。



****



 19時20分――



「彩花……遅いな」


腕時計を見ながら彩花のアパートの前でポツリと呟いた。

ひょっとして連休明けで仕事が忙しいのだろうか?


「もう少し待ってみるか……」


19時半まで待って戻らなければ、卓也のアパートの前で待っていよう。

既に部屋の鍵は入手してある。

どうせ、誰も戻って来ない部屋なのだ。俺がここにいたって問題は無いだろう。


 その後も彩花の部屋の前で待っていたが、戻ってくる様子は無かった。

仕方ない……。


ため息をつくと卓也の部屋へ入り、そこで彩花の帰りを待つことにした。



カンカンカンカン……


アパートの階段を上る音が聞こえて来た。そして隣の部屋の扉が開き、閉じられる音が聞こえた。


「彩花……帰ってきたんだな?」


よし、会いに行って来よう。

この世界で彩花は俺に会うのは久しぶりになるはずだ。

俺を見たらどんな顔を見せてくれるのだろう……?


靴を履くと、俺は部屋の扉を開けた。



ピンポーン


彩花の部屋のインターホンを押したものの、出てくる気配が無い。

部屋の灯りはついているのに……?


「彩花?いないのか……?」


すると、突然目の前の扉が開かれた。

彩花は驚いた様子で目を見開いて俺を見る。


「驚いたな…いきなり扉が開かれるから…って、彩花?!どうしたんだっ?!」


彩花の目に突然涙が浮かんできた。

何があったんだ?


すると……。


「拓也さん…わ、私…」


彩花の顔が悲し気に歪む。

その姿を見た時、俺の理性は飛んでしまった。


「彩花…っ!」


気付けば強く抱き締め、彩花の甘い唇にキスをして舌を絡める。

キスをしたまま抱き上げ、ベッドに寝かせると無言で彼女の上に覆いかぶさった。


 そしてこの夜……俺たちは言葉を交わすのも惜しいくらいに、何度も何度も互いの身体を求めあった――。




****



 翌朝――


俺と彩花はベッドの中にいた。

腕の中では幸せそうに眠っている彩花がいる。


「彩花‥…」


愛しい恋人の名を呟き、髪にそっと触れる。


「う~ん……」


すると彩花が身じろぎし、パチリと目を開けて俺を見た。


「おはよう、彩花」


「あ…お、おはよう…ま、まさか…私の寝顔、見てたの…?」


彩花が真っ赤な顔で尋ねて来る。


「勿論。俺の方からおはようって言いたかったからね」


「…!」


途端に彩花は益々真っ赤になると俺に背を向けた。



「…彩花。どうしたんだ?」


「だ、だって…寝顔見られていたなんて…は、恥ずかしいんだもの…」


背後から彩花を抱きしめ、耳元で囁いた。


「今更恥ずかしがる関係じゃないだろう?」


「う、うん……」


「好きだよ、彩花」


お前だけが俺の全てだ。


「うん、私も…拓也さんの事が好き」


そこで再び俺たちキスを交わした。


今日は1日彩花と一緒に過ごすと決めていた。恋人同士の甘い時間を‥‥…。


俺達にはもう、限られた時間しか残されていないのだから――。


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