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第2章 105 関わってはいけないのに

「え?」 


俺の言葉に彩花は驚いた表情を浮かべた。それは当然だろう、いきなり見知らぬ人間からお礼を言われて戸惑わないはずがない。

何か突っ込まれないうちに退散することにしよう。


「それじゃ」


そして、彩花からまるで逃げるように俺は自動ドアを潜り抜けて店の外へと出て行った。


もう深く関わらないようにしなければ……。もし彩花が死のルートに入ってしまったなら強制的に引き戻す。

俺の命を差し出す代わりに……。尤もそんな事態にはならないように注視していかなければならないが、必要以上に関わってはいけないんだ。


「彩花…安心しろ。今度こそ…何があってもお前を守ってやるからな」


店内で買い物を続けている彩花を一度だけ振り返ると、マンションへ足を向けた―。




****


 翌朝――


俺はアパートの階段近くに予めセットしておいた隠しカメラで様子を伺っていた。

そこには子供時代の俺が映り込んでいる。


「多分…親父に追い出されたんだろうな……」


コーヒーを飲みながらPCに繋げた映像を見ていると彩花が現れた。


「彩花……」


2人は何事か話している様子で、やがて彩花は手を振ると会社へ向かった。


「…よし。後で会社の様子を見に行くか……」


そして朝食の準備を始めた――。




****



 俺は今、彩花の会社の隣の商業ビルの屋上に清掃員のフリをして立っていた。


ここから給湯室の様子がよく見えるからだ。

もう何回もタイムトラベルをしているからよく知っている。


彩花は毎朝10時に社員全員のお茶を淹れる役割がある。なんて封建的な会社なのだろう。

お茶なら各自飲みたい奴が勝手に飲めばいいだけの話なのに……。


そして案の定椎名が現れ、親しげに彩花に話しかけている。

彩花はそんな奴のことを迷惑げにしている様子が手に取るように分かった。


良かった……こちらの世界の彩花は椎名をよく思っていないようだ。


だったら…。

俺は、奴に罠を仕掛けることにした……。





****



 彩花の退勤時間に合わせて、俺は会社の近くで待機していた。


椎名がまた彩花にちょっかいを掛けてくる可能性が大いにあったからだ。もし、奴が彩花に絡んできたら…その時は迷わず助けよう。

何も無ければそれで良い。



そして椎名は案の定、彩花を待ち伏せし……会社から出てきた彩花に声を掛けてきた。



椎名め……!!


彩花は奴に5回殺されている。

激しい憎しみが込み上げてきた。



気づけば俺は2人に駆け寄り……怒鳴りつけていた。


「おい!人の彼女に何やってるんだよっ!」


と…。


驚いたようにこちらを見る彩花と椎名。


その瞬間、思った。



ああ……やはり、この世界でも俺は彩花に関わってしまった――と。

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