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第2章 87 弾む心

 マンションの外に出ると、慎重に辺りを見渡した。今の所椎名の姿は見えない。


「彩花、椎名はいないようだ。 出てこいよ」


「う、うん……」


恐る恐る彩花は外に出てくると、その手をギュッと握りしめた。


「え?た、拓也さん?」


「どこであいつが見張っているかまだ分からないからな。こうして恋人同士のふりをしておくんだよ」


「そ、そうだね……」


彩花は俺の手を握り返してきた。


「よし、行こう」


そして俺たちは彩花のアパートへ向かった――。




**


「お待たせ、拓也さん」


アパートの部屋の前で待っていると、エコバッグを持った彩花が声を掛けてきた。


「あれ?もういいのか?」


「うん。着替えと洗面具に化粧ポーチくらいしか入っていないから。そ、それでお願いがあるのだけど………」


彩花がためらいがちに尋ねてきた。


「何だ?」


「うん。明日は拓也さんの部屋から出勤するから……パジャマと洗面具……部屋に置いておいて貰えないかな?仕事が終わったら取りに行くから」


「ああ、それは全然構わないけど?」


やった!これでまた明日の夜も彩花と会える!

内心小躍りしたい気持ちをグッと押さえて、返事をした。


「よし、それじゃ行こう」


彩花が戸締まりを終えると、再び俺のマンションへ向かった。

勿論、互いに手をしっかり握りしめながら……。




****


 部屋に戻ると、キッチンに立ってセンターテーブルの前に座っている彩花に声を掛けた。


「これから食事を作ろうと思っていたんだ。彩花も食事まだなんだろう?一緒に食べよう」


「うん。そうだけど……。食事なら私が作るよ?」


「いいって、俺が用意するよ」


「でも、今夜は泊めてもらうわけだし……。ただで泊めてもらうのは悪いもの。お願い、私に作らせて?」


「彩花……」


正直に言えば、彩花に料理を作ってもらいたい気持ちは山々だった。


「それじゃ…頼んでもいいかな?」


「うん、任せて?あ、それじゃエプロンある?」


彩花は立ち上がり、キッチンに入ると尋ねてきた。


「ああ、俺のでよければ……はい、ならこれ使って」


キッチンの壁掛けに掛けておいたエプロンを手渡すと、早速彩花は身につけた。

白いサロンエプロンは彩花がつけると、サイズが大きすぎて膝下まで届いていた。


可愛い……。

思わず見惚れそうになり、慌てて視線をそらすと部屋へ移動した。


PCに向かいながら、料理を彩花をチラチラ見ていると……つい願望を抱いてしまった。

一度、彩花に俺のシャツを……いわゆる『彼シャツ』を着て見てもらいたいと。


彩花は椎名という男のストーカーに悩まされて、俺の部屋へ来たというのに。


彼女の気持ちも考えず、すっかり有頂天になっている自分がいた――。






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