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第2章 79 月見酒

 コーヒーを飲み終えた頃には時刻は21時になろうとしていた。


流石にこれ以上彩花の部屋にいるわけにはいかない。


「ありがとう、食事とコーヒー。どれも美味かったよ」


立ち上がると彩花に礼を述べた。


「ううん。それほど大したおもてなしは出来なかったけど…」


彩花はどこか照れくさそうだった。


「今度は何か俺にお礼をさせてくれよ。…そうだ。来週の土曜日は卓也と3人でプレジャーランドに遊びに行くだろう?そのお金、全額俺に払わせてくれよ。勿論食事もな」


何しろ、15年前…俺は相当彩花の世話になったからな。その御礼を返さなければ。


「え…?でもそれじゃあまりに…」


「いいんだって。俺、こう見えても中々貯金があるんだぜ?それに…本当は彩花だって早くここから引っ越したいんじゃないのか?」


すると俺の言葉に驚いたのか、彩花が目を見開いた。


「どうして私が引っ越したいって分かったの?」


「それは…分かるよ。壁も薄いし、防犯も何もあったもんじゃない。若い女性が住むような場所じゃ無い…通れは思うよ」


「卓也さん…」


「だから、俺が帰ったらきちんと戸締まりしろよ?」


「うん、そうするね」


素直に頷く彩花。


「よし、それじゃ今度こそ本当に帰るよ」


そして玄関に向かうとスニーカーを履くと、改めて彩花を振り返った。


「じゃあ、今度は土曜日だな」

「土曜日…。うん、そうだね」


「おやすみ彩花」

「お休みなさい、拓哉さん」


2人で手を振ると彩花の部屋を後にした。



 アパートを出て、空を見上げると綺麗な夜空が広がっていた。

当然、隣の部屋は明かりが消えて真っ暗になっている。


あいつのことも注視していないとならないな…。


そして、自分の借りているマンスリーマンションへと帰宅した――。



****



 シャワーを浴び終え、タオルで濡れた髪を拭きながらベッドの置かれた部屋に戻ると、早速『地場発生装置』にPCを繋げながら呟いた。


「本当に教授は凄いよな…。あんな人間なのに、自在に時を超える事が出来る機会を発明するんだから」


どれ…。


今、彩花はどこのルートにいるのだろう?

どうか『死』へ続くルートに入っていませんように……。


ドキドキしながら、PC画面を覗き込んだ。



「…やった…大丈夫だ…。今のところ、彩花は全く新しいルートを進んでいるぞ?このまま進んでくれれば6月9日に彩花は死ななくてすむかもしれない…!」


嬉しくて小躍りしたくなってしまった。



「よし、今夜は祝杯でもあげるか!」


立ち上がり、キッチンへ向かうと冷蔵庫から缶ビールを取り出した。


「きれいな月だし…今夜は月見酒でもするかな」


そして窓際に座り、プルタブを開けるとビールを口にした。


「あ〜美味いな…。そう言えば…彩花は酒を飲むのかな…?」


出来れば、今度は彩花と酒を飲んでみたい…。


そう遠くない未来に――。


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