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第2章 45 皮肉な結果

 不動産屋に立ち寄り、マンスリーマンションの途中解約の手続きを済ませるとフラフラとおぼつかない足取りで町中を歩いていた。


心不全による彩花の死は…とうてい受け入れられるものでは無かった。


一体、どうすれば彩花を『死』という連鎖から断ち切ることが出来るんだ…?


その時…。


「あ…っ!アイツは…っ!」


10m程先を歩いていた男がパチンコ屋に入っていく姿が偶然目に入ったのだが、その男が何と親父だったのだ。


「まさか…!こんなところでアイツに会うなんて…っ!」


アイツ…俺がこんなに苦しくて辛い思いを抱えているのに…金もろくに無いくせにパチンコなんかやりやがって…っ!

しかも子供時代の俺は養護施設に預けられているっていうのに…っ!


途端に奴に対する激しい憎悪が心の底から湧き上がってくる。


くそっ!アイツ…一発ぶん殴ってやる…!


俺はアイツの後を追ってパチンコ屋へと入っていった。




パチンコ屋の店内は凄まじい騒音だった。

俺にはとてもではないか10分も耐えられそうに無かった。


「…」


ここで黙々と台に向っている人々の顔を見て回る。


おかしい…。奴の姿が見当たらない。

一体何処に消えたんだ…?


それから15分近く探し回ったが一向に奴の姿が見つからない。店内もうるさくて我慢の限界だった。


…もう諦めて帰ろう…。


そう思い、出口に向って歩き始めた時―。


「え…?」


俺の目の前を親父が通り過ぎていく。

しかもこの店の制服を着ていたのだ。


「あいつ…このパチンコ屋で働いていたのか…?」


なんだ…。仕事をしていたのか…。

途端に俺の中で一気に奴に対する怒りが静まっていった。


「まさか働いている奴を連れ出して…殴りつけるわけにはいかないよな…」


自嘲気味に笑うと、自動ドアをくぐり抜けて店の外へと出ていった。


それにしても皮肉なものだ。

奴が真面目に働き…彩花とは何の接点が無かったというのに…彩花は心不全で死んでしまうなんて…。


一体彩花は…どういう状態で死んでしまったのだろう?1人きりで死んでいったのだろうか…?苦しくは無かったのだろうか?恐怖は…あったのだろうか…?

その時の事を思うと、目尻に涙が浮かんできた。


「…くっ!」


袖で溢れそうになる涙を拭うと、俺は『時巡神社』へと足を向けた。


今度は…今度こそは、彩花を死なせない…っ!

現代に戻ったら、教授ともう一度詳し状況を精査し直すんだ。


そして…彩花と恋人同士になり、2人で6月9日を超えるのだ―。

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