閑話:作中に出てきた高分子材料
これまでの復習も兼ねまして。特にナイロン系は似たような名前のやつがいっぱい出てきているので、ここで特性をおさらいします。割と別物です。
6,6-ナイロン
作中での呼ばれ方:PA66
原料:ヘキサメチレンジアミン+アジピン酸
利点:丈夫、合成が比較的楽
欠点:水を吸いやすい(樹脂は水を吸うと性能が下がる)、海水や融雪剤で劣化する、融点が高すぎて射出成形に不向き(できないことはない)
6-ナイロン(アミラン)
作中での呼ばれ方:PA6
原料:ε-カプロラクタム(+重合開始剤としてごく少量の水)
利点:総合的なコストが比較的安い、染色性がよい、6,6-ナイロンほどではないが丈夫
欠点:6,6-ナイロンよりさらに水を吸いやすい、海水や融雪剤で劣化する
610-ナイロン
作中での呼ばれ方:PA610
原料:ヘキサメチレンジアミン+セバシン酸
利点:吸水性が6-ナイロンの半分以下、実使用環境で6-ナイロンより丈夫、原料のセバシン酸はひまし油から合成できる
欠点:乾燥状態で比較すると6-ナイロンや6,6-ナイロンより軟らかい、海水や融雪剤で多少劣化する
11-ナイロン(リルサン)
作中での呼ばれ方:リシニア、PA11
原料:11-アミノウンデカン酸
利点:ほぼ水を吸わない、耐衝撃性が高い、破断伸びが大きい、原料をひまし油から合成できる、融点が低く、射出成形が容易
欠点:乾燥状態での剛性が6,6-ナイロンの半分
メタ系アラミド繊維
作中での呼ばれ方:コーネックス
原料:メタフェニレンジアミン+イソフタル酸
利点:耐熱性が高い(300℃以上)
欠点:高価、日光や紫外線で劣化する
ポリカーボネート
作中での呼ばれ方:ポリカーボネート、PC
原料:ホスゲン+ビスフェノールA
利点:透明、耐衝撃性が高い
欠点:耐薬品性が低い、経年劣化で黄ばむ(自動車のヘッドライトの黄ばみもこれ)、粘度が高すぎて射出成形に不向き(できないことはない)、原料の毒性が高い
ポリウレタン
作中での呼ばれ方:(ポリ)ウレタン、PU
原料:ジイソシアネート類+ジオール類
利点:発泡材として利用しやすい、いろんなものを接着できる
欠点:湿気で劣化する(水を吸うのではなく、構造が直接破壊される)、原料の毒性が高い
フェノール樹脂
作中での呼ばれ方:フェノール樹脂、ベークライト
原料:ノボラック or レゾール(どちらもフェノールとホルムアルデヒドを酸もしくはアルカリ触媒下で反応させたもの)
利点:耐熱性と耐炎性がよい、海水に強い
欠点:硬化時に内部に微小な気泡ができるため、FRPにしてもエポキシほど強度が上がらない
ポリブチレンテレフタレート
作中での呼ばれ方:PBT
原料:テレフタル酸+1,4-ブタンジオール
利点:性能バランスが良い
欠点:高温多湿環境で劣化する(ウレタン同様、構造が破壊される)
備考:1,4-ブタンジオールをエチレングリコールにするとPET(ペットボトルの材料)になる
取りこぼし等ありましたら教えてください




