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大いなる余裕

 歩兵科の活躍と発展の方向に危機感を抱いた騎兵科は機械化を指向したが、豆戦車のほかにバイクの導入にも力を入れていた。1912年には三共が子会社として三共内燃機を設立し、アメリカのハーレーダビッドソン社の製品を輸入・販売している。


「ハーレーはいいバイクだが、日本人の体格や道路事情に合っているとはいいがたい。日本人向けのバイクを設計してもらえないだろうか。生産拠点はこちらで用意しよう」

「ほう……それなら、ついでに現在弊社で開発中の自動車もその拠点で生産できないだろうか。コストダウンのために樹脂部品がほとんど構造材料に使えないから、工場を一から作らなければいけないところだったのだ」

「おや、それはいいことを聞きました。であればその自動車も三共内燃機で売りましょう。それなら飲める条件です」


 三共の塩原の要請を受けて、菊池は二輪車の開発業務も蒔田と鈴木の四輪技術部に投げることを決めた。


「四輪とは根本的に考え方がちげえな……せめてエンジンくれーは部品を共通化しねえと、道雄さんがえれぇめにあっちまう」


 三共内燃機の工場で、この二輪車とジムニーの生産指導・管理を行うのは鈴木道雄である。彼ならいつも通り何とかしてしまうだろうが、彼から以前聞いた「後工程はお客様」という言葉(彼自身は耀子から聞いた)に従い、生産現場の混乱が最小限で済むように工夫を凝らすように気をつけた。


 こうして出来上がったのが、三共内燃機「GT500」である。最高出力37ps/5500rpm、最大トルク5.5kgm/3200rpmのユニフロー式2ストローク水冷単気筒エンジン"B005A"を積み、これと常時噛合式6段変速機を組み合わせて、乾燥重量199kgの車体を168km/hまでスムーズに加速させた。




「うひょー!モントゴメリーよりずっと乗りやすい!」


 GT500の量産試作車を快調に飛ばしているのは、陸軍士官学校に(いやいや)通っている山階宮芳麿である。テイジンは軍でGT500のフリート試験をすることを決め、通勤通学にバイクを使っていた芳麿は何かの気晴らしになればと思い手を上げたのである。


「外国製のバイクよりも小さくて日本人の体格にあっているし、低回転から力があって運転もしやすい。これなら欧州のメーカーにも引けを取らないんじゃないか」


 2スト特有の甲高い音を響かせながら、彼は快調に通学路を走り抜けていった。

タイトルはGT380の開発コンセプトから。史実では陸王を販売していた三共内燃機ですが、この世界ではそのうち「隼」を売ることになるかもしれません

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挿絵(By みてみん)

本作世界のチベットを題材にしたスピンオフがあります。

チベットの砂狐~日本とイギリスに超絶強化されたチベットの凄腕女戦車兵~ 

よろしければご覧ください。
― 新着の感想 ―
[一言] まあ、スズキはホンダと同じく二輪、四輪を両方生産してるからこれはおもしろくなりそうね。 ホンダは創業者の本田宗一郎氏がまだおさないからむりだけどいずれはホンダも4ストエンジンで席巻しそうね
[気になる点] こうして出来上がったのが、三共内燃機「GT500」である。最高出力37ps/5500rpm、最大トルク5.5kgm/3200rpmのユニフロー式2ストローク水冷単気筒エンジン"B005…
[気になる点] 色んなものが簡単そうに開発されているのは人材引き抜きと予算と工作機械が手に入る状況と何より時間をポンポン飛ばしているからだとして こんなに色々作って配備するための資源と予算が足りる気が…
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