表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

53/258

いつもそばに

タイトルはトウゴマの花言葉から。

「……というわけで、最終的にひまし油からポリアミドを合成することができるというわけですね」


 弱火にかけられているガラス管から糸を紡ぎながら耀子は学士論文の中間報告を行った。


「えーと、反応を振り返りますけど、まずひまし油を鹸化するとリシノール酸ができて……このリシノール酸を、熱分解するんですか」

「はい。そうするとウンデシレン酸とヘプチルアルデヒドができるので、ウンデシレン酸の方を使います」

「末端に二重結合があるから臭化水素を反応させて……臭素を付加してやれば、ここにアンモニアが反応できるから、両末端にカルボキシル基とアミノ基がそろった分子ができるわけだな」


 黒田と真島が反応経路を振り返る。その間に耀子は火を消して片付けを始めた。


「PA66より85℃低融点で、飽和吸水率は1/8程度。そして剛性は低いですが、その分破断伸びはすさまじいことになっていますよ」

「はあ……それって、鷹司さんとしては"使える"モノなんですか?」

「それはこれから考えることですね」


 耀子が合成したのはナイロン11……あるいはリルサンと呼ばれるポリアミドの一種である。この樹脂は本来1947年にフランスの化学会社が開発するもので、耀子が語った通り、ひまし油から合成することができる。66ナイロンは石炭もしくは石油由来の成分から合成しなければいけないため、植物油脂から合成できることは、資源の乏しい日本にとって大きなアドバンテージになる……はずである。


「トウゴマの生産に向いている土地がインド亜大陸と支那大陸というのは少々つらいが、石油よりはずっと手に入れやすいだろう。学士には十分すぎる成果だ」

「ここからもうちょっと頑張ってみますよ。まだまだ試したいことがありますから」


 彼女の前には、大量のやりたいことが積みあがっていた。

耀子が大学に来た目的の1つが達成されました。資料調査のためにこの程度の文字数しか書けなかったので、後々加筆するかもしれません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
挿絵(By みてみん)

本作世界のチベットを題材にしたスピンオフがあります。

チベットの砂狐~日本とイギリスに超絶強化されたチベットの凄腕女戦車兵~ 

よろしければご覧ください。
― 新着の感想 ―
[一言] 他にもバイオベースマテリアルは出てくるのかな? 2,5-フランジカルボン酸とか。PETよりPEFのほうがバリア性高くて食品容器には向いてるので。 ・「サツマイモから作られるポリエステル」 ・…
[一言] 合成元の化石燃料を他に転用出来るのは大きいですね。 中国に利権を持つ欧米相手に特許料取れますね。 インドから輸入すればブロック経済化が遅延しそう。
[一言] 66ナイロンがあるので自分の乏しい想像力ですと民生利用くらいしか具体的な用途があまり思いつかないですけど、吸水性が低いのを活かして以前話に出ていたハンモックとかの海軍向けのテコ入れになるのか…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ